バドミントンは、その羽根のついたシャトルが高速で飛ぶスポーツです。トップ選手が放つスマッシュではシャトルが500km/hを超える速度で飛び、2023年には男子で565km/h、女子で438km/hという世界記録が公式認定されました。本記事ではバドミントン速度をテーマに、シャトルスピードの基礎知識から最新記録、他競技との比較、さらには速度向上のための練習法まで幅広く解説します。読めばバドミントンの速さの秘密がわかり、競技への理解が深まるでしょう。
目次
バドミントンのシャトルコックの速度について
バドミントンのシャトルコックは、ラケットで打たれた瞬間に非常に高速な初速を獲得します。スマッシュ時には数百km/hに達し、飛んでいる間も常に速度が変化します。シャトルコックの速度は初速から大きく減速しますが、初速自体が非常に速いのが特徴です。本節ではシャトルコックの速度の仕組みや、測定方法について見ていきます。
羽根がついているシャトルコックは空気抵抗を受けやすく、球全体が大きく空気を押しのける形状のため、ラケット面に当たった直後の速度(初速)は最大で500km/hを超えますが、ネットを越えるころには数百km/h程度まで減速しています。さらに相手コートに落ちる直前(終速)の速度はおよそ80〜100km/h程度と見られ、初速と終速の差が大きいのがバドミントン最大の特徴です。シャトルコックの形状や重量によりこのような速度変化が生まれます。
シャトルコックの初速とは
シャトルコックの初速とは、ラケットでシャトルを打った直後の瞬間的な速度を指します。エース級のプロ選手のスマッシュでは初速500km/hを超え、世界記録では565km/hが認定されています。初速が速いほど攻撃力が高くなりますが、同時に空気抵抗も大きく働くため、シャトルは短時間で大幅に減速します。
一方でレシーブやクリアでは、初速はスマッシュほど高くありません。これはフォームや打ち方が異なるためで、サーブやクリアではコースや回転を重視するため速度は控えめになります。それでもサーブでもプロ選手で200km/h前後、クリアで150km/h前後の速度が出ることがあります。
シャトルコックの終速と速度変化
シャトルコックは初速の後、空気抵抗で急速に速度が落ちます。一般に、スマッシュで打たれたシャトルは相手コートに落ちる寸前の終速が80〜100km/h程度になると言われています。つまり、初速500km/hから最終的に100km/h前後まで落ちるわけです。この減速はシャトルコックの先端の羽根が大きな空気抵抗を生むためです。
速度変化の具体例として、トップ選手のスマッシュ初速が493km/hと記録されたとき、終着点では約100km/hまで減速していたというデータもあります。空気抵抗の影響でシャトルは急激に減速し、その結果ネットを越えたときには狙いやすい適度な速度になっているのです。
速度の測定方法
シャトルコックの速度は通常、スピードガンや高速度カメラを使って測定されます。多くの公式大会ではラケット競技で使われる速度測定装置(スピードガン)で、スマッシュやサーブの速度をリアルタイムに計測しています。測定はラケット面を離れた瞬間に行われるのが一般的です。
ライブカメラで解析する方法もあり、ヨネックス社などは専用の施設でギネス世界記録にも認定される速度の計測を行っています。測定値はラケット面を離れてから初速となるため、実際のコート上でも同様の方法で速度を捉えることが可能です。
空気抵抗と減速のメカニズム
シャトルコックは羽根の形状により強い空気抵抗を受けます。高速で飛ぶほど空気抵抗は二乗で増えるため、ラケット面から離れてほんの少しの時間が経つだけで大幅に速度が落ちます。つまり、羽根つきの複雑な形状がシャトルのスピードダウンを速めています。
このためバドミントンでは短い距離で速度が落ち着き、試合ではシャトルの減速を計算に入れたレシーブやクリアが行われます。選手は相手のスマッシュを受けるとき、シャトルがネットから速やかに減速してくるため、反応時間が一般のボール競技よりも長いことに気付きます。また、減速効果により急激に落ちるドロップショットなど多彩な展開が可能になるのです。
スマッシュとサーブ:速度の違い

バドミントンの攻撃ショットであるスマッシュは非常に高速です。一方、サーブは試合の再開に使われるショットで、速度よりも位置や回転が重視されます。ここではスマッシュとサーブの基本的な違いと、それぞれの速度傾向について見てみましょう。
スマッシュの特徴と速度
スマッシュはシャトルコックを高い位置から打ち下ろす攻撃的なショットです。腕や体重を大きく使い、シャトルに勢いを与えます。プロ選手のスマッシュ初速はおおむね300〜400km/h、トップ選手では500km/hに達することもあります。緩やかな軌道で上から振り下ろすことで、打点を高く保てるほど速い速度が出ます。
スマッシュはラケットを振り抜く速さが重要で、テクニックも速度に大きく影響します。体全体を使った回転運動で振ることで、より速い速度を出すことが可能です。逆にインパクトの位置や重心移動が不十分だと速度は落ちるため、専門家はフォームの改善によってスマッシュ速度を上げる方法を研究しています。
サーブの種類と速度
バドミントンのサーブにはロングサーブとショートサーブなどがあり、フォアサイド・バックサイドに分けられます。サーブはコートに入れやすい位置や回転が重要であるため、スマッシュほどの速度は求められません。一般的にサーブの速度はスマッシュよりもやや低く、プロの高速サーブで200km/h前後、一般的なサーブでは100km/h前後です。
特にショートサーブは相手を前に釣り出すために低い弾道で打ち、速度も比較的抑えられています。逆にロングサーブは相手コートの奥まで飛ばすため速度を出すことがありますが、やはりスマッシュほどの速度にはなりません。いずれにせよサーブ速度の違いはショットの戦術ごとに使い分けられています。
スマッシュ vs サーブ:速度比較
スマッシュはバドミントンで最速のショットで、実際の計測ではスマッシュが500km/h超に達するのに対し、サーブでは200km/h前後と速度差がかなりあります。つまりスマッシュの方がサーブよりも2倍以上速い場合が多いと言えます。
例えばトッププロの男性選手ではスマッシュの平均速度が350km/h以上になることもありますが、速いサーブでもせいぜい200km/h前後です。女子選手でもスマッシュは300km/h前後、サーブは150km/h程度です。このように技術上、スマッシュとサーブの速度には大きなギャップがあり、試合戦術にも影響します。
バドミントンにおける最高速度記録

バドミントンのシャトルの速度に関する最高記録は常に注目されています。特にギネス世界記録ではスマッシュの初速が認定されており、2023年に大記録が生まれました。ここでは男女別の世界最速記録と、その他注目すべき高速スマッシュの例を紹介します。
ギネス認定の最速スマッシュ速度
2023年4月、インドのサッウィサイラジ・ランキレッディ選手がスマッシュでシャトル初速565km/hを打ち出し、公式にギネス世界記録™として認定されました。同時に女子部門ではマレーシアのタン・パーリー選手が初速438km/hを記録し、女性の世界記録保持者となりました。これまでの男性記録は2013年にマレーシア選手が出した493km/hでしたが、10年越しに大きく更新された格好です。
この記録はヨネックス社の施設で専門的に計測され、ギネス公式認定員によって厳正に確認されたものです。現在のところ男女別で男性565km/h、女性438km/hがバドミントンの世界最高速度として認められており、バドミントンはすべての球技を通じても圧倒的な速さを誇る競技となっています。
歴代の高速スマッシュ記録
直近のギネス記録更新以前にも、歴史的な高速スマッシュは数多く生まれてきました。世界の主要大会でもプロ選手が300〜400km/hの高速スマッシュを放っており、2013年に記録された493km/hのスマッシュは当時世界最速として話題になりました。
また日本国内でもトップ選手が300km/hを超えるスマッシュを出す例があります。世界チャンピオンやオリンピアンは日頃から高速スマッシュの練習を積み重ねており、試合では450km/h前後の破壊力あるショットを繰り出しています。これらの記録は選手のパワーと技術の進化を示し、今後もさらに速い記録が期待されています。
その他の注目記録と選手
男子世界記録保持者のランキレッディ選手や、女子記録保持者のタン選手以外にも、高速スマッシュで知られる選手がいます。例えば同じくマレーシアのタン・ブンホン選手は世界記録更新当時に494km/h超えを達成し、韓国の選手も450km/h近いスマッシュを記録したことがあります。日本では佐藤翔治選手が450km/h台のスマッシュを放ったことがあり、世界トップクラスの速度が測定されています。
これらの選手は並外れたスイング速度と技術で記録を作り出しており、次世代の選手たちもさらに高速なショットを目指して挑戦を続けています。
バドミントンと他のスポーツの速度比較
スポーツの中でもバドミントンのスマッシュは特に速い部類に入り、他競技と比較しても群を抜いています。ここでは代表的な球技とバドミントンの速度を比較してみましょう。
競技 | 最高速度(参考) |
---|---|
バドミントン(スマッシュ) | 約565 km/h(公式記録) |
テニス(サーブ) | 約263 km/h(サム・グロス選手 記録) |
卓球(スマッシュ) | 約280 km/h(推定値) |
野球(打球) | 約195 km/h(打球速度) |
ゴルフ(ドライバーショット) | 約349 km/h(ライアン・ライ選手 記録) |
テニスとの比較
テニスのサーブはバドミントンのスマッシュに比べて遅く、世界記録は約263km/h(男子プロのサム・グロス選手)が最高です。バドミントンは空気抵抗の大きいシャトルを用いるにもかかわらず、ラケットを振る速さが圧倒的に速いため、結果としてスマッシュ速度はテニスの約2倍以上に達します。実際には片手で打つテニスよりも両手を使えるバドミントンのほうが大きな力をシャトルに伝えやすい面もあります。
卓球・野球・ゴルフとの比較
卓球のスマッシュも非常に速いですが、書籍等によると約280km/h前後といわれています。硬式野球の打球速度はアーロン・ジャッジ選手の記録で約195km/h(打球速度)ですが、硬い球である分衝撃が大きいものの速度ではバドミントンに及びません。またゴルフのドライバーショットではライアン・ライ選手が349km/hを記録していますが、これもなおバドミントンの公式記録(565km/h)には遠く及びません。
以上からバドミントンは用いる道具や球体が独特であるにもかかわらず、世界一速いスイングスピードを実現する競技であると言えます。特にスマッシュは「世界最速のラケットショット」として知られ、他の球技と比べて圧倒的な速さを生み出しています。
バドミントンで速度を上げるための練習法

バドミントンでスマッシュの速度を上げるには、テクニックとパワーの両方を鍛える必要があります。フォーム改善、筋力トレーニング、適切な用具選択など、総合的なアプローチでスピードアップを目指しましょう。ここでは効果的な練習法をいくつか紹介します。
スイングフォームと打ち方
スマッシュ速度アップの基本は正しいフォームです。体重移動をしっかり行い、腕の振り抜きに体幹の回旋を加えることで、より大きな力をシャトルに伝えられます。ラケット面に当てる瞬間に全身を使うようにし、手首のスナップで最後の一押しを加えることがポイントです。コーチからフォーム修正を受けたり、自分のスイング動画を確認したりして、振り遅れや腰の回転不足などの課題を改善できます。
また、打球練習ではターゲットを狙う精度よりも振り切る速さを意識した練習がおすすめです。例えばミラーを見ながら素振りをしたり、遠心力を意識してラケットを振るドリルを行ったりすると、身体の使い方がスムーズになり速いスイングが身につきます。
筋力トレーニングとコンディショニング
スマッシュのパワー源は腕力だけでなく、体幹や下半身の筋力にもあります。特に腹筋や背筋、大腿四頭筋、胸筋などをバランスよく鍛えるとスマッシュに必要な安定感と爆発力が増します。具体的にはプランクやスクワット、ランジ、メディシンボール投げなどを取り入れて、全身のバランスを強化します。継続的なトレーニングで筋持久力と瞬発力を高め、試合終盤でもしっかり振れる体を作りましょう。
- 腕立て伏せやチューブトレーニングで腕や肩の筋力強化
- スクワットやランジで下半身の瞬発力をアップ
- 体幹トレーニング(プランク、ロシアンツイストなど)でスイング時の安定性向上
ラケットやシャトルの選び方
ラケットの性能もスマッシュ速度に影響します。一般にフレームが硬く、シャフトがしっかりしているモデルを選ぶとパワーロスが少なく、力が効率的にシャトルに伝わります。例えばヨネックスのナノレイシリーズやアストロクスシリーズなど、高い初速を出しやすいラケットがあります。ガットの張りも高テンション(24~28ポンド)に設定すると、打球感が固くなりスマッシュの威力をアップできます。
また、シャトルコック選びも重要です。練習用では軽めで飛びやすいモデルを、試合用では公式シャトルコックと同等の重さ・耐久性のあるものを使い分けましょう。湿度や気温も飛距離に影響するため、コンディションに合ったものを選ぶと安定した速度が出せます。
- 硬めのフレームとしっかりしたシャフトのラケットを選定
- ガットのテンションを高めに(24~28ポンド)設定する
- 練習用と試合用でシャトルコックを使い分ける
まとめ
バドミントンは羽根つきシャトルという独特な特徴がありながら、世界最速の球技として知られる競技です。トップレベルではシャトルの初速が500km/hを超え、2023年には男子565km/h、女子438km/hという驚異的な記録がギネス認定されました。他スポーツと比べてもバドミントンのスイング速度は群を抜いており、その速さは競技観戦の醍醐味ともなっています。
シャトルの速度はフォームやパワー、道具選定など多くの要素が絡み合って決まります。今回紹介した練習法やトレーニングを取り入れて技術と筋力を磨けば、スマッシュのスピードは確実に上がるでしょう。バドミントンの速度の秘密を理解し、より速いショットを目指すことでプレーの幅も広がり、競技の楽しさが一層深まります。
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