バドミントンのダブルスでは、配球が試合の行方を大きく左右します。相手にスマッシュを打たせない「下から取らせる配球」や、クロス・ストレートを使い分けてコートを広く使うなど、さまざまなパターンがあります。本記事では、ダブルスならではの配球の基本と、攻撃時・守備時に有効な配球パターン、フェイント配球やペアでの連携、さらには練習法までを詳しく解説します。最新のテクニックを取り入れ、相手を翻弄できる実践的な配球術を身につけましょう。
目次
バドミントン ダブルス 配球の基本と重要性
バドミントンにおいて「配球」とは、相手に打たせるショットやコースを意図的に決めて攻める技術のことです。とくにダブルスでは味方パートナーとの連携が重要なため、単に鋭いスマッシュを放つだけではなく、相手前衛や後衛の位置を考慮しながらシャトルをコントロールします。
ダブルスでは4人がコートにいるため、シングルスのように一箇所だけを狙って打ち込む戦術は難しくなります。そこで、配球によって相手ペアのフォーメーションを崩し、ミスを誘ったりスキを突くことが必須になります。
効果的な配球を使うと、相手にスマッシュや強打を打たせない流れを作りやすくなります。例えば、自分たちが守備に回りたくない場面では下側のショットで相手にシャトルを浮かせ、常に攻撃のチャンスを作り出します。
逆に相手に攻撃されているときは、ロブで深く返して守備体制を立て直し、次のチャンスを伺うといった配球が求められます。こうした攻守の切り替えを配球でコントロールすることで、ダブルス特有の複雑なラリーを有利に進められるのです。
初心者にとっても、まずは「相手を前後左右に振る」ような基本的な配球から意識するとよいでしょう。冷静に状況を見て、パートナーとどこに打つかを相談するだけでも、勝率は大きく変わります。
配球とは何か
配球とは、相手のいる位置や体勢を考え、シャトルを意図的に打つ方向や高さをコントロールすることです。単に強いショットを打つのではなく、目的に応じて狙いを定めたコースで返球します。
ダブルスでは相手ペアを4人いる中で崩す必要があるため、相手一人だけでなくペア全体を考えた配球が重要になります。たとえば前衛と後衛の間に打ち分けて相手のポジションチェンジを誘う、相手の利き腕と逆サイドを突く、などの意識が大切です。
ダブルスで配球が重要な理由
ダブルスは高速ラリーになりやすく、力任せのショットだけでは点が取りにくい競技です。そのため、配球で相手にミスをさせたり、相手の強いショットを封じ込める戦略が勝敗を分けます。配球が上達すれば、相手のレシーブ能力の高さにも対応しやすくなり、自分たちが主導権を握るラリー運びが可能になるのです。
とくに初・中級者の試合では、パワーやスピードよりも知恵を使った配球力で差をつけられます。
攻守を支配する配球の役割
配球の目的は攻守のコントロールにあります。攻撃時は相手に甘い返球を必ず返すようにコースを限定し、決定機を作り出します。守備時はロブやクリアで相手の攻撃を逃がし、体勢を立て直します。こうすることで、相手のペアに好き勝手にラリーをさせず、自分たちのペースで試合を進められます。
具体例を挙げると、相手に高い打点からの攻撃をさせないために「下から取らせて上げさせる」配球を意識します。これによりシャトルが浮き、こちらは次の返球をじっくり準備することができます。
初心者向けの配球の基本
基本的には、「相手に嫌なコース」にボールを送ることを目指しましょう。例えば、相手ペアの連携を崩すために肩口を突いてバックハンドで返させる、など定番のパターンがあります。
また、パートナーと「得意なショットを打つタイミング」や「コースをカバーする約束事」を事前に決めることで、試合中の混乱を防ぎ、配球の質を上げられます。
攻撃に活かす配球パターン

攻撃時は相手前衛を崩し、後衛に甘い返球をさせる配球を狙います。たとえばクロスコートショットで相手前衛の逆側隅を広く使い、味方のスマッシュチャンスを作ります。直線的なストレートドライブは、早く相手にプレッシャーをかけながら真後ろのオープンスペースを活用できます。
さらに、ネット前のドロップショットやプッシュで相手前衛を飛びつかせ、浮いた返球を誘うのも効果的です。これらのショットで前衛を動かすことで、後衛にリスクの高いスマッシュを打たせる展開をつくれます。以下の表は、攻撃時と守備時の主な配球の違いをまとめたものです。
攻撃時の配球 | 守備時の配球 |
---|---|
低いドロップやプッシュで前衛を攻略 | 高いロブやクリアで危険を回避 |
クロスで角を広く使う | ドライブで相手前衛にプレッシャー |
スマッシュで決定機を狙う | 沈めるショットで相手に浮いた球を作らせない |
クロスコートショットでコートを広げる
相手前衛の反対側にクロスコートで返球すると、相手ペアは体勢を大きく崩されます。これにより生まれたストレート側のスペースを味方前衛がカバーし、攻撃のチャンスにできます。クロスショットは角度がつく分強度が落ちますが、前衛の隙間を突く場合は有効です。
ストレートドライブで攻め込む
ストレートドライブ(高速の直線ドライブショット)は、相手前衛にプレッシャーをかけつつ後方に深く打ち込みます。相手前衛が飛び出して返球しようとすると後衛が処理しづらい浮いたシャトルになりやすく、味方後衛のスマッシュチャンスにつながります。また、相手後衛を押すために体勢を崩さず速い打点で追撃することも狙いの一つです。
ネット前のドロップショットで崩す
ネットに近い前衛は羽根が落ちてくる直前のドロップショットやプッシュが得意です。相手前衛を反応させにくいタッチで誘い出し、その後浮いたシャトルを味方後衛がスマッシュで決めるコンビネーションが有効です。とくに相手がロブを嫌がって前に詰めている場合には、ドロップでタイミングを崩せるので効果的です。
スマッシュに繋げる配球
最終的な狙いであるスマッシュを決めやすい配球も重要です。相手がやや高く前に返球してきたら、迷わずスマッシュを打ってポイントを奪います。例えばドロップやネット前のタイトな球で相手前衛を下げておき、その後スマッシュを打ち込むコンボパターンがよく使われます。
守備を安定させる配球テクニック

守備時はまず「相手にタッチを取らせない」ことが目標です。相手スマッシュに直面したら、高いロブで自陣後方深く返し時間を稼ぎます。同時に、クリアで自分たちの前後位置を整え、次の攻撃に切り替えやすい状態を作りましょう。
また、浮いた球をなくす工夫としては、相手前衛を抑え込むストレートドライブも有効です。相手が前進して攻めてくるタイミングでは、沈めるショットで相手に浮いた返球を余儀なくさせないようにすると、こちらが常に安全に前に出られます。
ロブで展開をリセット
強烈なスマッシュを受けたときは、必ず高いロブでコート奥深く返します。これにより自分たちは守備体制に移り、相手は次にどの位置から攻撃するか一瞬タイミングを崩されます。ロブを上げることで、自分たちの攻撃担当も再び位置を整えられる時間を得られます。
クリアで時間を稼ぐ
クリアショット(深いクリア)は、ロブよりも速いタイミングで自分の味方にシャトルが戻りやすく、エースになることは少ない代わりに時間を稼いだりラリーを繋ぐのに向いています。特に相手のスマッシュに連続で攻められそうな局面では、前衛から裏にクリアを打ち、再度サイド・バイ・サイドに陣形を整えることができます。
ドライブで攻撃の勢いを削ぐ
相手がスマッシュやドライブで攻めてきた場合、カウンターとして自分もドライブで強烈に返球してプレッシャーをかけ返せます。特に相手の前衛が手薄になっている場合は、スピードのあるドライブで前衛を抜くように打ち込むと、攻めの流れを断ち切りつつ相手ペアに浮かせるミスを誘発できます。
スマッシュを打たせない工夫
相手にスマッシュチャンスを与えない配球も守備の要です。具体的には相手が腰より下(ネット近く)でシャトルを打たざるを得ないよう、常にシャトルを落として取らせる意識を持ちます。例えば、速いドロップやロブを使って相手に深い位置から打たせることで、必然的に返球が浮いてきて次にこちらが攻める展開を生み出します。
前衛と後衛の役割に応じた配球戦略
ダブルスでは前衛と後衛でそれぞれ担当領域と役割が異なります。それに応じて配球も変える必要があります。前衛はネット前の速い展開で先制点を狙い、後衛は安定したショットで後方から味方を支援する役割です。
たとえば前衛はパートナーのスマッシュに続けてネット前に落ちてくるシャトルを処理しやすいポジションを常に保ちつつ、相手前衛が飛び込みにくいコース(エッジや隅)が狙い目です。後衛は相手前衛が前にいる場合はクロスドライブで背後を突くなど、コートの奥深くまたは斜め方向を狙った配球をすることでペア全体の守備範囲を広げます。
前衛が狙う攻撃的配球
前衛はネット際でのプッシュやドロップを多用し、相手前衛を動かしてチャンスを作ります。特に相手前衛が前に詰めている時には、前衛からわざと緩いドロップを打って相手を惑わせ、次にスマッシュが可能な浮いた球を引き出すことを狙います。コースとしては相手前衛の横から斜め前に向けるストレートプッシュなどが有効です。
後衛が行う守備的配球
後衛はクリアやドライブで相手の攻撃をいなぎ、相手のフォーメーションを崩すためのコースに打ち分けます。相手前衛が高い位置にいる場合は、バック側(後衛のバック)寄りの深いクリアを狙い、相手フォーメーションを後ろに押し下げると良いでしょう。また前衛が攻撃的に出やすい状況では、相手にロブを打たせやすいドライブを選択するのも守備的配球の一つです。
前後のポジションチェンジと配球
攻撃を続けていると前衛がスマッシュクリーンナップを狙える一方、守らざるを得ない状況になると前衛と後衛が入れ替わるローテーションが生じます。その際、それぞれがどの打ち方を得意とするかの兼ね合いも重要です。例えば、一時的に前衛に下がるプレーヤーにはクリアを意図的に緩めに返球し、ロブへの準備がしやすいようにするなどの配球も考えられます。配球とポジショニングは常に連動して考えましょう。
フェイントショットを使った配球法

フェイント配球は、相手に反応を強要してミスを誘う有効な戦略です。相手の予測を裏切るために、例えば速いドライブに見せかけたカットショットでスピードを落としたり、落差の大きいカットドロップでタイミングをずらしたりします。これらの変化球を使いこなすことで、相手前衛を抜いたり相手のリズムを狂わせられます。
ドライブのフェイントで揺さぶる
通常のドライブショットのつもりを装い、ラケットのフェイスをきり小さく滑らせてカットドライブに変える技術です。相手は速いドライブを予想して体勢を詰めるため、球が沈んでくると反応が遅れてミスさせやすくなります。攻撃中の緩急を付けたいときに有効な手段です。
ネット前でのタッチショット
フェイント系では、ネット前でシャトルをかるく打つタッチショット(ヘアピンやパラレルドロップ)が王道です。相手前衛がネットギリギリに張り付いている場合、あえてネット前に落とし相手を前に詰めさせることで、次の高い返球を前衛に決めさせます。素早い手首の動きが重要です。
ボディを狙う配球
相手ペアの体の方向を突く配球もフェイントの一つです。たとえばサービス近くにシャトルを打って相手を後ろに下げさせ、それからネット前にショートに打ち込むコンビネーションや、フォアからバックへフェイントショットで返させてから逆サイドへの強打で制圧します。相手の目線や体の向きに逆らうようにボールを運ぶイメージです。
緩急をつけたごまかし配球
テンポを変えることも重要なフェイント技術です。相手がラリーのリズムを覚え始めたら、あえて一瞬打点をずらしてカットしたり、ロブの後にサッとネット前に視線を逸らすような緩急の組み合わせで揺さぶります。緩急差は相手のタイミングを外し、大きなミスや合わせ損ねを誘発します。
ペア連携を高める配球戦術
ダブルスは2人1組で戦う競技ですから、配球においてもパートナーとの連携が不可欠です。試合前に「特定の局面で必ず決めるショット」や「相手がこう動いたらこのショットを打つ」などの決め事を作っておくと、連携がスムーズになります。
また、試合中は積極的に声を出し合い、次にどこへ配球するか伝え合いましょう。お互いの位置や意図が明確になることで、ムダな混乱を防ぎ、ミスを減らすことができます。
決め事を作る配球パターン
たとえば「ロブが浅いときはフォアサイドにスマッシュ」というように、特定の配球転機で使うショットをペアで決めておくと安心です。このようなルールがあれば、相手の浅いロブが来た瞬間に後衛がスマッシュと前衛の動きを合わせられ、確実にチャンスをものにできます。
お互いの動きを意識した配球
配球は自分側の戦術だけでなく、相手を狙いつつ味方の位置も考える必要があります。前衛がネットを強く張っているときは、後衛はその前衛と協力して斜めのコースを埋めておくことで、更に前衛が入りやすいボールを作れます。互いにどのポジションに動きやすいかをイメージしながらコースを選ぶことが大切です。
声かけで連携を強化
プレー中のコミュニケーションも連携強化の鍵です。「はい」「入る」などの簡単な声かけで、パートナーに自分の動きや意図を示すクセをつけましょう。また、返球で打つ前に相手の位置を知らせ合うのも有効です。これらの声かけが習慣化すれば、自然と配球ミスが減り、攻守の連携がスムーズになります。
練習で磨く配球スキル
配球は理論だけでなく、実践で身につけることが重要です。効果的な練習方法としては、ターゲット練習があります。コートに的を置いたり、コーナーばかりを狙わせるドリルで、自分が意図した通りにシャトルを打ち分ける精度を高めましょう。
また、ゲーム形式の練習で実戦力を鍛えることも効果的です。例えば「3球連続で攻撃を成功させるまで勝負を続ける」といった課題を設けると、実際の試合に近いプレッシャーで配球を試せます。
ターゲットを定めたショット練習
相手ではなくコートの特定のエリアを狙う練習を繰り返すことで、打球精度を上げます。たとえば、真ん中に立つパートナーが触らないようにコーナーを狙い続ける、など具体的な目標を設定するのがコツです。こうした反復練習で確実に配球できる範囲を広げましょう。
実戦を想定したゲーム形式練習
配球力を鍛えるには実戦形式の練習が欠かせません。得点を目的にした通常の試合練習のほか、例えば後衛が必ずスマッシュで終わるなどの約束事を設けて、配球の意識を高めると良いでしょう。こうした制約付きのゲームでは、いつも以上に配球の工夫が求められるため、本番さながらの学びが得られます。
ペアで行う配球ドリル
味方ペアを交えた3人以上の練習でも配球力は向上します。例えば1対1対1のラリー形式で、相手ペアの一人が弱く、もう一人が強い設定にし、配球で弱いほうを狙う練習をします。あるいはスマッシュを一方に集中して打たせるような特定の状況を再現し、どこに配球すれば相手が困るかを体験的に学べます。様々な相手や状況で試すことで、配球センスが磨かれます。
まとめ
バドミントンダブルスでは、単に攻撃力や返球力だけでなく、相手を動かし隙を作る「配球力」が勝利の大きな鍵となります。本記事では、配球の基本的な考え方から、攻守それぞれに応じた具体的な配球パターン、フェイントや連携戦術、さらには練習法まで解説しました。これらを実践することで、相手ペアを思い通りに動かし、優位に試合を進めることができます。最後に何度も言いたいのは、配球の技術はトレーニングによって必ず身につけられるということです。日々の練習で意識的に配球を磨き、ダブルスで勝利を手に入れましょう。
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