バドミントンとテニスは、どちらもラケットを使うスポーツですが、その見た目以上に違いが多くあります。シャトル(羽根つきの球)とテニスボールでは飛び方が異なり、ラケットの重量やコートサイズ、ルールにも大きな差があります。本記事では用具からルール、体力面など多角的に比較し、初心者でもわかりやすくバドミントンとテニスの特徴を解説します。
ラリーのスピード感や戦術も異なり、バドミントンは短時間で切れ目なく高速ラリーが魅力、テニスは長いラリー展開やネットプレーの多彩さが楽しめます。
バドミントンとテニスの違いとは?
バドミントンとテニスにはラケットを使う共通点がありますが、その性質は大きく異なります。バドミントンでは軽量のシャトル(羽根つきの球)を使い、ラリーが極めて高速で展開するのが特徴です。対してテニスは弾むボールを用い、重いラケットでしっかりと遠くに飛ばします。このため、プレーの感覚や必要な技術に違いが生まれます。
また、競技コートのサイズやルール、使用機材にも差があります。バドミントンは室内で行われ、軽いラケットで素早く小さなコートを動き回る競技です。一方、テニスは屋外(または屋内)で広いコートを使い、パワーと持久力がより求められます。以下では、これら複数の観点から具体的に違いを見ていきます。
共通点と基本的な違い
まず共通点として、どちらもネットを挟んで対戦するラケット競技である点が挙げられます。シングルスとダブルスの試合形式があるため、一見よく似たスポーツに思えます。しかし、基本的なプレー感は全く異なります。主な違いは使用する道具やプレースタイル、必要な体力です。
- ラケットを使用する競技である
- ネット越しにコートを挟んで試合をする
- シングルスとダブルスの形式がある
バドミントンはシャトルを床に落とさないように高速で打ち合うのに対し、テニスは弾むボールをコントロールしつつプレーします。これらの共通点と違いを知ることで、それぞれのスポーツが持つ特徴が明確になります。
歴史や起源の違い
バドミントンはインドの「プーナ」という遊びから発展し、19世紀にイギリスでルールが整えられました。対してテニスはフランスの手打ち球技が起源で、現在の形は19世紀後半にイギリスで確立されています。近代的に普及した時期は近いですが、テニスはヨーロッパを中心に早くから広まり、バドミントンはアジア各国で特に発展しました。
日本での導入時期にも違いがあります。テニスは明治時代に紹介され、戦前から大学や国内大会で行われていました。バドミントンは戦後に広まり、1960年代以降に急速に普及しました。こうした歴史的背景の違いが、各国での人気にも影響を与えています。
人気・競技人口の違い
世界的に見ると、バドミントンは中国や東南アジア、インドなどアジア圏で特に人気の高いスポーツです。アジア勢が世界大会の上位を占めることが多く、一部の国では国民的スポーツとなっています。一方テニスはアメリカやヨーロッパで盛んで、日本でも錦織圭選手や大坂なおみ選手の活躍で注目度が上がりました。
国内での競技人口は、テニスが学校教育や市民大会などで広く普及しており多い傾向にあります。バドミントンも全国大会や社会人リーグで楽しまれていますが、競技人口としてはテニスの方がやや上回っています。それぞれの競技で観戦者や愛好者の層にも違いがあります。
用具・コート・設備の違い

バドミントンとテニスは同じ「ラケット競技」ですが、使用する道具やプレー環境には大きな違いがあります。使用する球体やラケットの形状と重さ、コートの広さやネットの高さなど、それぞれの特徴を見ていきましょう。
ラケットの大きさと重さの違い
バドミントンラケットは細長く軽量で、全長は約68cm以内、重さは約75~95g程度です。主にカーボン製で作られ、素早い振り抜きと細かい操作を可能にする設計になっています。一方、硬式テニス用ラケットは全長が約73.7cmまで認められ、重さは約270~310gと、バドミントンラケットの約3倍以上になります。
また、テニスラケットのグリップはバドミントンより太めです。これは、テニスではラケットを丈夫に握りしめて遠くへ飛ばす必要があるためで、手首への負担を和らげる工夫です。これらの違いにより、スイングのフォームも大きく変わってきます。
球(シャトルとボール)の違い
バドミントンで使用する球はシャトルコックと呼ばれる羽根つきの物体で、重さは約5gと非常に軽量です。シャトルは打った後に急激に速度が落ちるため、弾道は比較的ゆるやかに下がります。初級者はシャトルを遠くに飛ばすのが難しく感じることもあります。
テニスで使う硬式ボールはフェルトで覆われた直球で、重さは約56~59gあります。シャトルとは異なりバウンドと弾む性質があるため、ラケットで打った後も速度を保ったまま飛び続けます。ボールにはトップスピンやスライスをかけて飛距離や軌道を調整するなど、多彩なテクニックがあります。
コートとネットのサイズの違い
バドミントンコートのサイズはシングルスで縦13.4m×横5.18m、ダブルスで横6.1mです。ネットの高さは中央で約1.524m(両端の支柱は1.55m)となっています。これに対してテニスコート(シングルス)は縦23.77m×横8.23m、ダブルスで横10.97m、ネットの高さは中央で約0.91m、両端で1.07mです。
バドミントン | テニス | |
---|---|---|
球の形状・重量 | 羽根付きシャトル(約5g) | 硬式ボール(約56~59g) |
ラケット | 全長約68cm、重さ約75~95g | 全長最大約73.7cm、重さ約270~310g |
コート(シングルス) | 13.4m×5.18m ネット高1.524m |
23.77m×8.23m ネット高0.91m |
コート(ダブルス) | 13.4m×6.1m (ネット高1.524m) |
23.77m×10.97m (ネット高0.91m) |
コートの広さの違いにより、プレー時の動き方も変わります。バドミントンは比較的狭いコート内で素早く細かいステップを踏む必要があります。テニスでは広いコートを大きく走ってカバーするため、下半身全体への持続的な負荷が強くなります。
シューズ・服装など装備の違い
専用シューズにも違いがあります。バドミントンシューズは軽量で接地面のグリップ力が高く、急激な方向転換や着地時の衝撃を吸収するクッション性に優れています。一方、テニスシューズは安定性と耐久性を重視し、クレー・ハード・グラスコートそれぞれに適したソールパターンが用意されています。
ウェアの特徴でも差があります。バドミントンは屋内競技であるため、通気性や動きやすさを重視した軽い服装が一般的です。テニスは屋外でも行われることから、日焼け対策や汗処理に優れた素材のウェアが好まれます。こうした装備の違いも、それぞれのプレーに合わせた工夫と言えます。
ルール・ポイントシステムの違い

バドミントンとテニスの得点方法や試合の進行には大きな違いがあります。バドミントンは1ゲームを21点先取で、ラリーポイント制(サーブ権に関係なく得点)が採用されています。テニスは1ゲームを「0-15-30-40-ゲーム」の流れで進め、6ゲーム先取で1セットを取る方式になっています。以下で詳細を比較します。
得点方法と試合形式の違い
バドミントンは1ゲーム21点先取で2点差がつけば勝利となります。20-20からは2点リードが必要で、最大30点先取で打ち切りです。ポイントはサーブに関係なく得られるため、ラリーが続くほど点数が積み上がっていきます。
テニスでは1ゲームの得点を継続して4ポイント取ることでゲームが決まります(「0-15-30-40-ゲーム」)。6ゲームを先取して1セットを取り、通常は3セットマッチで勝敗を決めます。現在は1セット6-6になった場合にタイブレークを行うことが一般的です。
サービス(サーブ)・フォルトの違い
バドミントンのサービスは腰より下でラケットを打ち上げ、必ず対角線のサービスエリアに入れる必要があります。サーバーは片足を地面に付けたまま固定しなければならず、サービス中に違反があると反則(フットフォルト)となります。
テニスのサービスはベースラインの後ろからボールを高くトスし、オーバーヘッドで打ちます。1stサーブと2ndサーブがあり、相手コートのサービスボックスに入るように打ち分けます。2回ともサービスがフォールトになると相手にポイントが与えられます。
セット進行と規則の違い
ポイント間やゲーム間の休憩時間にも差があります。バドミントンは1ポイントごとに約5秒前後のインターバルがあり、ゲーム間には約2分間の休憩があります。テニスではポイント間に通常15〜20秒、ゲーム間とセット間に90秒から2分の休憩があります。
また、テニスには6-6からのタイブレークがあり、バドミントンは30-29の1ポイントで勝敗が決まります。バドミントンは連続した高速ラリーが続くことが多く、テニスは休憩を挟みながら戦略を練る時間があるという違いもあります。
運動量・体力面での違い
バドミントンとテニスは運動の特性が異なります。バドミントンは非常にテンポが速く、トップ選手のスマッシュ初速は300km/hを超えることもあります。一方テニスはサーブが200km/h程度です。短い距離で激しいラリーが続くバドミントンと、広いコートを走り回るテニスとでは、求められるフィジカルが違います。
瞬発力と持久力の要求
バドミントンは瞬発力が強く求められます。スマッシュやドライブは一瞬で動き出す必要があり、ラケットの先端でシャトルを速く捉える反射神経が重要です。狭いコートで頻繁に急停止とダッシュを繰り返すため、下半身の瞬発力とともに腰や肩の柔軟性も要求されます。
テニスではそれほど瞬発力を使わず、持久力が重点になります。広いコートを長時間に渡って行き来するので、スタミナが必要です。さらに、ボールを飛ばすために全身の筋力を使うため、パワーを維持しながらプレーする持久力と体幹の安定性が求められます。
フットワークと動き方の違い
バドミントンのフットワークは縦横の細かい動きが多いのが特徴です。高い位置へのジャンプや急な方向転換を頻繁に行うため、アキレス腱や膝への負担も大きいです。特にラケットを持つ腕と逆側の足を素早く動かす必要があり、左右対称の筋力が重要になります。
テニスでは横方向のステップを中心に動きます。長いランニングストロークでは後方へのコートカバーが求められ、ネットプレーでは前後への移動が必要です。足は滑ることが前提なので、フットワークは素早くも持続的なランニング寄りになります。
消費カロリーと運動強度の違い
消費カロリーでは、体重60kgの人が1時間プレーした場合、テニス(シングルス)が約460kcal、バドミントンが約440kcalとされています。テニスは長いラリーで持久的に体を動かすのに対し、バドミントンは短時間の高強度運動が続くため、運動強度のタイプが異なります。
両者とも全身運動で消費カロリーは大きいです。バドミントンはラリーごとにインターバルが短くなるため心肺機能への負荷が高く、テニスは有酸素運動要素も強く脚力や体幹が鍛えられます。どちらもダイエットやフィットネスに適したスポーツです。
初心者や年代別の向き不向き

バドミントンとテニスはどちらも初心者から楽しめるスポーツですが、その特性から向き不向きがあります。バドミントンは軽い道具で素早く体を動かせるため、子どもから高齢者まで比較的始めやすい面があります。テニスは設備やフォームに慣れる必要がありますが、一度習得すれば誰でもラリーの面白さを感じられます。
初心者に向いている競技はどちら?
一般的に、軽い運動から始めたい初心者にはバドミントンが向いています。シャトルは重力の影響で落ちやすく、空中に留まる時間が長いため、初心者でもラリーがある程度続けられます。ネットが高い分ショットは学習が必要ですが、簡単に打ち返せる場面も多いので運動に慣れやすいです。
一方、テニスは最初にルールやラケットの扱いに慣れる必要がありますが、とにかくボールを遠くに飛ばせる楽しさがあります。人気が高い分、テニススクールや指導者も多いので、基礎を教わりながら練習する環境が整っています。どちらも自分の運動習慣や目的に合わせて始めると良いでしょう。
年齢や体格ごとの適性の違い
体格の小さな子どもにはバドミントンが向いています。室内競技で風の影響がなく、軽いラケットとシャトルで体のコントロールを学びやすいからです。無理な負荷がかかりにくく、ケガのリスクも低いため、安全に運動能力を伸ばせます。
成人や高齢者の場合は無理のない方を選ぶといいでしょう。テニスは確かに走る距離が多いものの、ラリーのテンポはバドミントンほど急ではないため、ペース配分すれば長く続けられます。また体力に自信がない場合は軽量ラケットのバドミントンから始めても良いでしょう。
練習環境・費用面での違い
練習環境では、バドミントンは体育館やインドアコートが一般的です。ラケットやシャトルは比較的安価で揃えやすく、学校や自治体で用具の貸し出しもあることが多いです。
テニスは専用コートが必要で、クラブやテニススクールに通うケースが多いです。テニスラケットはバドミントンのものより高価ですが、メンテナンスすれば長く使えます。いずれも仲間とグループで始めると施設代や道具の費用を分担でき、手軽に続けやすくなります。
各競技の魅力と楽しみ方の違い
バドミントンの魅力は、試合のスピード感と身体の瞬発力を鍛えられる点です。シャトルがネットにかかるヒヤリとした瞬間や、スマッシュが決まったときの爽快感が最大の楽しみです。細かいステップワークやスピーディな駆け引きが身につきます。
テニスの魅力は、戦術の幅広さとテクニックの多様性にあります。ドロップショットやスライス、ロブなど多彩なショットを駆使して対戦する面白さがあります。ベースラインからネットまでコート全体を使う戦い方や、ロングラリーを制したときの達成感はテニスならではです。
まとめ
バドミントンとテニスは一見似ていますが、用具やルール、運動の性質が大きく異なる競技です。ラケットや球の特性、コートサイズなどはそれぞれのスポーツに最適化されており、相互に代用できるものではありません。ルール面でもスコア方式やサービス方法が異なり、試合の流れも違います。また身体に要求される運動強度でも、バドミントンは瞬発的な動きが多く、テニスは走り続ける持久運動が中心となります。
初心者がどちらから始めても楽しめますが、自分の体力や練習環境に合わせて選ぶことでより快適に取り組めます。それぞれの特徴を理解し、ぜひ自分に合ったスポーツで楽しい時間を過ごしてください。
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