バドミントンのダブルスでは、サーブをめぐるルールに少し複雑な部分があります。特に「得点が偶数なら右側、奇数なら左側からサーブする」や「直前のラリーで勝ったペアが次のサーブ権を得る」といった特徴的な決まりごとを知らないと、試合中に混乱しがちです。本記事ではダブルスのサーブに関する基本ルールから注意点、シングルスとの違い、最新の規則までをわかりやすく解説します。サーブの打ち方や位置取りのコツまで幅広く紹介するので、初心者から上級者まで参考になる内容です。
まずはダブルス特有の基本ルールを押さえていきましょう。
目次
バドミントン ダブルス サーブの基本ルール
ダブルスのサーブでは、**シャトルを打つ位置とサーブ権の移動**に明確なルールがあります。コートは自チーム側の左右に分かれており、サーブする位置は**自分たちの得点が偶数点なら右側、奇数点なら左側**と決められています。このときサーブは必ず低くネットを越え、対角線上の相手側サービスコートに入れなければなりません。例えば、日本ペアが2点(偶数)なら左側にいる選手が右側サービスコートからサーブし、3点(奇数)なら左側サービスコートからサーブします。同じペア内でどちらがサーブするかは得点に応じて変化しますが、サーブのルール自体はシングルスと共通です。
また、サーブ権は直前のラリーで勝利したペアに移ります。つまり、一度得点を取ったペアはそのままサーブを続け、生涯続けてポイントを獲得し続ける限りサーブを交代しません。この際、得点が増えて偶数・奇数が入れ替わるため、サーブする位置も右から左へ、左から右へと移動します。一方で、相手側からのサーブでラリーに勝利して得点した場合は「連続得点」ではないため、**サーバーは交代せずに得点前と同じコート側でサーブを打ちます**。このように3つの基本原則(偶数=右、奇数=左/勝者がサーブを続行/サーブ連続時に位置移動)を組み合わせて覚えると、ダブルスのサーブの仕組みは整理できます。
サービスエリアの基本(偶数点=右、奇数点=左)
ダブルスでもシングルスでも、**サーブは得点によってコートの左右が決まる**点に変わりはありません。自分たちの得点が偶数の場合は自陣右側のサービスコート(ベールト右)から、奇数の場合は左側のサービスコートからサーブします。さらに、サーブは必ず対角線方向に飛ばす必要があり、自陣の右から打つときは相手陣の右前方にあるサービスコートに、左から打つときは相手陣の左前方にあるサービスコートにシャトルを入れます。これにより左右・前後の位置関係が明確になり、サービスの範囲を正しく理解できます。
**例:** 日本ペアが現在4点(偶数)なら、サーブを打つ選手は右側に立ち、相手ペアの右側サービスコートに打ち込みます。次に日本ペアが5点(奇数)になると、今度は左側の選手が左側サービスコートからサーブを打ちます。
サーブ権とラリー勝者
ダブルスでは、**前回のラリーで勝ったペアが次のサーブ権を得る**というルールになっています。ラリーに勝利して得点したチームは、そのままサーブを続行できます。したがって、自分たちのサーブで得点を重ねる限り、そのままサーバーは続けてサーブを打ち続けます。ただし、同じペア内でどちらがサーブを打つかは得点の増減とともに交互に変わります。もし自側のサーブで相手にラリーを奪われた場合は、得点もサーブ権も相手ペアに移ります。相手がサーブ権を持っていたパターンの場合、そのラリーで勝利すると得点とサーブ権を奪い返し、自チームの得点が偶数か奇数かに応じてサーバーが決まります。
**ポイント:** 得点が偶数に増えた場合は右にいたペアの選手、奇数に増えた場合は左にいた選手がサーブを打ちます。言い換えれば、ラリーに勝って点数が増えたときのみサーバーが移動し、負けて相手にサーブが移ったときはサーブする側の位置は変わりません。
サーバーの連続サーブとポジション移動
同じペアが連続して得点すると、**サーバーはポジションを移動しながら連続サーブ**を行います。具体的には、今までサーブしていた選手は得点が偶数から奇数へ、または奇数から偶数に変化するたびにコート上で左右に移動してサーブします。例えば、自ペアが2点から続けて得点して3点になった場合、右側にいた選手が左に移動してサーブを打つことになります。それに対し、相手側からのサーブで得点した場合(サーブ権が移った場合)は、サーバーは変わりませんので位置もそのままです。この交代ルールにより、サーブポジションが複雑になりがちなダブルスでも、一定の秩序が保たれています。
サーブ時の姿勢と打点制限
サーブを打つときは**ラケットの先端(ラケットヘッド)**が下向きになり、シャトルは体の腰より下の打点で打ちます。2019年4月以降の最新ルールでは「シャトルコルクの一番底面をラケットで打つ」ことが義務付けられ、実質的に打点は**地面から115センチ以下**に制限されました。このため、サーブ時は背筋を伸ばしながら腰の位置より低くラケットを振る必要があります。打点が高すぎるとフォルト(反則)になるので注意してください。さらに、サーブ時の両足は地面から離してはいけません。**フットフォルト**として、踏み込んだりジャンプしたりすると反則となります。これらの基本姿勢を守ることで、正しいフォームでフェアにサービスを行うことができます。
ダブルスでのサーブ順とコート配置

ダブルスではペア内での役割分担や立ち位置も重要です。サービスが始まるとき、ペアのどちらが前衛(ネット近く)でどちらが後衛(ベースライン付近)に立つかは戦術にもよります。一般的には、相手がショートサービスを予想して近くに選手を配置したり、ロングサービスに備えて後ろに選手を置いたりします。サーバーは得点に応じたコート(右または左)に立ち、対角にいる相手ペアに対してサービスを放ちます。レシーブ側は2人とも相手コートに向かい合い、ペアのうち1名はネット付近、もう1名は中間あたり(またはベースライン寄り)に立つことが多いです。これにより、どちらかの選手がショートサーブにフォローし、もう一方がロングサーブやドロップショットに対応する体制が整います。
サーブ権の移動順序
ダブルスでは、サーブ権がペア間で回っていく順序が決まっています。順序を覚えておくと試合中に迷いません。例えば、ペアA(選手AとB)とペアC(選手CとD)の試合で、Aがサーブを始めたとします。このとき順番は「A→D→B→C→A→…」というふうに巡ります。つまり、Aがサーブしたあとラリーに勝つと、相手チームのもう一人(D)が次のサーブを打ち、さらに勝利すると自チームのもう一人(B)が、という具合です。このように固定されたサーブ順序を意識しておくと、サービスチェンジのたびに誰が打つべきかが予測できます。
サーバーとレシーバーの基本配置
サーブが行われる際のプレーヤーの配置にも一定のパターンがあります。サーバーは現在の得点に応じたサービスコートに立ち、その対角線上にレシーバー(相手ペアの受け手)が構えます。サーブする相手ペアの2名がレシーブに立つとき、攻めの布陣として**前衛・後衛のフォーメーション**をとることが多いです。前衛はネット近くで小さなショートサーブに対応し、後衛はベースライン付近から遠く来るロングサーブに備えます。なお、サーブを打つ直前にレシーバーは必ず自コート内に両足を置き、センターラインや境界ラインに触れてはいけません。これらの配置と動きを味方と事前に打ち合わせておくことで、スムーズに試合を進めることができます。
前衛と後衛の役割
前衛(ネット付近)と後衛(ベースライン付近)の役割分担は、ダブルスでは非常に重要です。サーブ直後は、多くの場合前衛の選手が相手のレシーブに素早く反応し、ネット付近で弾くような返球やドロップショットで攻める役割を担います。一方、後衛の選手は長いラリーになったときにコート後方をカバーし、強力なスマッシュやロングクリアで得点機会をうかがいます。サーブをきっかけに自ペアが攻撃に転じた場合には前衛がネットプレーで詰め、ディフェンス時には2人で横並び(サイドバイサイド)になって相手ショットへの守備幅を広げるのが基本です。パートナー同士はどちらが前衛に回るか、どの場面でポジションを変えるかを事前に確認しておくと、連係プレーがスムーズになります。
ダブルスサーブの反則とフォルト

ダブルスではサーブ時にもいくつかの反則行為(フォルト)があります。**主なフォルト例**を覚えておくと、自分がミスしないよう注意できるだけでなく、相手の反則を知っておくことで勝負を優位に進められます。代表的なものは以下の通りです。
- **打点の高さ違反:** シャトルは地面から115cm以下で打ちます。2019年4月以降は腰より下からでなく打点が<115cm以下である必要があります。高さを超えた打点でサーブするとフォルトです。
- **フットフォルト:** サーブ時に両足は地面に接し、コート上から離してはいけません。踏み出したり片足を浮かせたりすると反則です。また、**センターラインを踏み越える行為**(ペアのどちらかがセンターライン上に出る)もフォルトになります。
- **ネットタッチとアウト:** サーブでシャトルがネットに触れて相手側のサービスコートに入ればレット(一から再サーブ)ですが、相手コートに届かなかったり、コート外に飛んだりするとフォルトです。サーバーやレシーバーの身体・ラケットがネットに触れただけでも即フォルトになります。
これ以外にも、例えば**シャトルを投げてから打つ**「転がしサーブ」や、**シャトルに意図的に回転をかける**「スピンサーブ」なども認められていません。違反があった場合、そのラリーは無効となり相手に1点が入るので注意しましょう。
打点の高さ制限違反
サーブの打点が高すぎると大きなフォルトになります。規則では、サーブは腰より低い打点から打つことが義務付けられていましたが、最新の改定で「**シャトルのコルク部分をラケットで打つ**」と明記され、結果的に地面から約115cm以下での打点が求められています。この制限を超えてシャトルを打ち上げると反則ですので、自分より背の高い相手がいる場合は特に注意が必要です。常に腰をひき、腕を低く振り下ろす意識を持つと良いでしょう。
フットフォルト(足の動き)
サーブ時の足の位置と動きにも規則があります。**サーバーとサーバーのパートナー**両方の足は、サーブを打つ瞬間に静止したまま地面に接していなければなりません。具体的には、サーブの直前に踏み込んだり、足を引いたり、前に踏み出す行為はすべてフットフォルトです。また、センターライン(コート中央)をまたいでしまうと、自分とパートナーでどちらかがセンターラインを超えたと見なされフォルトとなるので、ラインからはみ出さないように立ち位置を調整しましょう。
ネットタッチとアウト
サーブでシャトルがネットを触れたり境界線を越えたりした場合も反則となることがあります。サーブ時に**シャトルがネットに触れてしまい相手コートに入らなかった場合はフォルト**です。逆にネットに触れてから相手コートに入った場合はレット(再試合)となります。さらに、サーバーやレシーバーの体やラケットがネットに触れただけでも即フォルトポイントになりますので、サーブ時はネット付近に近づきすぎないようにしましょう。
ダブルスとシングルスのサーブルールの違い
ダブルスとシングルスでは使用するコートの範囲が異なるため、サーブルールにも違いがあります。**幅方向**では、ダブルスではコートの横幅いっぱいまでがサービスエリアになりますが、シングルスではコートの外側のサイドライン(ダブルスの「外側ライン」)はサービス外となります。**奥行き方向**では、ダブルスではサーブの長さを制限する短いサービスラインがありますが、シングルスではベースラインいっぱいまで使用できます。つまり、ダブルスでは比較的短いロングサービス(ロブ)しかできない範囲になっているのです。下表でシングルスとダブルスのサーブ範囲の違いをまとめます。
項目 | シングルス | ダブルス |
---|---|---|
サービス幅 | シングルスのサイドラインまで(狭い) | ダブルスのロングサイドラインまで(広い) |
サービスの長さ | ベースライン手前まで可能 | 前方に短いサービスラインが設定され、ベースラインまでは届かない |
このように、単純な違いはサービスエリアの広さと奥行きです。ダブルスではコート幅が広がる分、横への配球チャンスが増えますがロングサーブは短くなることを覚えておきましょう。
ダブルスサーブの戦略と活用法

サーブはルールを守りつつ、戦略的に使うことが大切です。**ショートサーブ**(ネット際に低く落とす)と**ロングサーブ**(相手コート奥に浮かせる)を使い分けることで、相手のリズムを崩したり、有利な展開を作ったりできます。一般的にダブルスではショートサーブが多用されますが、相手がこれを予測して前寄りにポジションを取っているときは、思い切ってロングサーブを放ちコート後方へのプレッシャーをかけるのも有効です。また、レシーブペアが左右どちらにいても対応できるよう、**対角線以外を意識**してサービスコースをばらけさせると相手を戸惑わせられます。
ショートサーブとロングサーブの使い分け
ショートサーブ(短いサービス)は相手の前衛を下げさせやすく、次のラリーでネット前でのボレー戦に持ち込みやすいメリットがあります。逆に、相手前衛が甘い体勢だとわかったときはロングサーブ(ロビングサーブ)で相手ベースラインまで追い出し、カウンターを狙う戦術もあります。これらを使い分けると、相手ペアがどちらの体制にしても対応が難しくなります。たとえば**フリックサーブ**と呼ばれる、突然長いロブを放つ短いスイングのサーブで相手を驚かせる方法もあります。ただし、反則にならないようにラケット面の向きと打点に気をつけて打つことが前提です。
最新ルール: スピンサーブの禁止
最近の大会規則では、「**スピンサーブ**」に関する扱いが大きな話題です。かつて一部の選手が行っていた特殊な回転サーブ(シャトルに強い回転をかける)は、2023年から実験的に禁止され、2025年4月のBWF総会で正式に**完全禁止**となりました。そのため、現在はサーバーは常にシャトルのコルク部分を打弾し、意図的に回転を与えることは認められていません。公式規則では「ラケットはシャトルのコルク部分を最初に打ち、シャトルに回転を加えない」と明記されています。したがって、回転をかけるテクニックは使えないため、フェアプレーを損なわないよう注意しましょう。
パートナーとの連携方法
ダブルスではサーブ後にすぐラリーが始まるため、サーブ前後の連携が試合のカギを握ります。サーブする側では、サーブを打つ人ともう一人(サーバーのパートナー)が互いの役割を決めておきます。例えば、サーバーがネット前で攻めのボレーに適しているならパートナーは後方からロブに備える、という具合です。逆に自チームがレシーブ側のときは、サーブの種類に応じて前衛・後衛のどちらがどこを守るかを素早く判断し、声を掛け合ってポジションを整えると良いでしょう。練習でも、サーブ練習だけでなく**サーブ後のカバーリングの練習**まで行うと、実戦でのミスが減ります。
サーブ練習のポイント
ダブルスのサーブ練習では、左右のサービスコートやネットギリギリとベースラインぎりぎりの両方を狙える技術を身につけることが大切です。地面に目印を置いて、偶数点で右のコート・奇数点で左のコートへ確実に入れる練習を繰り返すと、実戦で動揺しなくなります。また、打点が115cm以下に収まっているかを確認するために、ネットの高さにシャトルを置いた目印や壁に目線を固定する方法も有効です。パートナーと一緒に交互にサーブ練習をしたり、実戦形式のゲームでもサーブ位置に注目して反復すると、お互いの位置取りと動きが自然に体に入り、実際の試合で安定したサーブが打てるようになります。
まとめ
ダブルスにおけるサーブは、左右のコート、ポイントの取り合い、ポジションの役割など多くのルールと戦術要素が絡み合っています。まずは「偶数=右側、奇数=左側から打つ」という基本ポジションをしっかり覚え、サーブ権はラリー勝利ペアが持つことを理解しましょう。さらにサーブ時の打点(115cm以下)や両足の位置といった細かな規則を守ることも重要です。シングルスとの違いを押さえつつ、ショートサーブとロングサーブを使い分け、パートナーとの連携を高めることで、サーブから得点につながる機会が増えます。
最新ルールではスピンサーブが禁止されている点にも留意しつつ、正しいフォームでサービスを練習してください。これらのルールとポイントをしっかり守り活用すれば、試合でのミスが減りダブルスのラリーを有利に進められるはずです。
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