バドミントンの試合では、コート周辺に立つ線審(ラインジャッジ)の姿をよく見かけます。線審はシャトルが境界線内に入っているかどうかを判定する重要な役割を担っており、プレイヤーとは異なる視点で試合をサポートします。この線審の仕事は、実は意外と専門的な知識や技術を必要とします。本記事では、バドミントン線審の役割や判定のルール、資格取得の方法、そして必要なスキルなどを詳しく解説します。
バドミントンプレイヤーや観戦者、さらに審判を目指す方にも役立つ情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
バドミントン 線審の基本役割と担当ライン
バドミントンの線審とは、試合中に担当するライン上でシャトルがコートの内側に落ちたか外側に落ちたかを判定する審判です。主に「イン」と「アウト」のコールを行い、得点に直結する判定を担当します。コート上には主審(チェアアンパイア)やレフェリー(競技役員長)など複数の審判員が配置されていますが、線審は主審がすぐには目が届かないライン部分の判定を補佐します。
公式なルール(公認審判員規程)によると、線審は担当ラインについて全責任を負い、シャトルがアウトの場合は大声で「アウト」とコールし両腕を水平に広げて示します。一方、インの場合は声を出さずに右手でラインを指して示すのが原則です。シャトルが落ちた瞬間までは判断を避け、着地後に素早くコールします。見えない場合や判定が困難な場合は両手で顔を覆って主審に合図します。
大会規模に応じた線審人数と配置
線審の配置や人数は大会の規模によって異なります。アマチュアの小規模大会や部活動の試合などでは、主審1人と線審2人の体制が一般的です。この場合はコートの斜め向かいの角に各1人ずつ配置され、それぞれ自分から最も近い2本のラインを担当します。例えば、ワンコートを2人でカバーするときは、各線審が隣接する2本のラインを交互に判定します。
大会が大きくなると線審も増えます。中規模では4人が配置されることが多く、この場合は3つの隅にそれぞれ1~2人が立ち、各線審が担当ラインを分担します。国際大会や全国大会など大規模な大会では、線審が8~10人配置されることも珍しくありません。コートの周囲すべてのライン(内側・外側問わず)をカバーできるよう多数配置され、主審が座るライン以外の沿線を満遍なく判定できるようになっています。
このように、線審の人数が増えるほど一人あたりの担当ラインは少なくなるため、判定がしやすくなります。反対に人数が少ない場合は、一人で複数のラインを見なければならないため、瞬時の判断力と集中力がより求められます。
シングルスとダブルスで異なる判定ライン
バドミントンではシングルスとダブルスで使用するコートの範囲が異なります。シングルスの試合では、内側のサイドライン(シングルスライン)とベースラインが境界線となり、奥側の外側ラインはラインの外とみなされます。一方、ダブルスでは外側のサイドライン(ダブルスライン)とベースラインが境界線となり、内側のサイドラインはダブルスラインの内側に含まれるため境界線ではありません。
- シングルス:内側サイドラインとベースラインが有効な判定ラインとなります。外側サイドラインにシャトルが当たった場合はアウトです。
- ダブルス:外側サイドラインとベースラインが有効な判定ラインとなります。内側サイドラインにシャトルが当たってもインになります。
線審は試合形式(シングルスかダブルスか)によって判定基準が変わることを常に意識する必要があります。同じシャトルの落下点でも、シングルスではダブルスでは判断結果が異なるため、担当する試合形式のコート範囲を正確に理解しておくことが大切です。
バドミントン線審の判定基準とコール方法

線審の主な仕事はシャトルがインかアウトかをコールすることですが、その判断基準はシャトルのコルク部分がラインに触れているかどうかで決まります。以下に判定基準とコール方法をまとめます。
イン判定の基準
シャトルが「イン」と判定されるのは、シャトルのコルク部分が有効ラインにかかっている(またはライン内に完全に着地している)場合です。重要なのはシャトル全体ではなくコルク部分で判定を行う点です。つまり、たとえ羽根の先端がライン上にかかっていても、コルク部分がラインから外れていればアウトになります。逆に、羽根がライン外でもコルクが少しでもラインに触れていたらインとなります。
コルク部分をしっかり見るため、線審はシャトルが落下する瞬間に目線をラインの近くに移動させ、着地位置を瞬時に確認します。試合中は高速でシャトルが飛び交うため、経験を積んでいないと判定は難しいですが、「コルクで決まる」という判断基準を常に意識することが大切です。
アウト判定の基準
シャトルが「アウト」と判定されるのは、明らかに有効ラインの外側に着地した場合です。具体的には、コルク部分がラインに一切かかっておらず完全にコート外に落下したときです。難しい例として、羽根がラインに軽く触れているように見えるケースがありますが、あくまでコルク部分が基準ですので、羽根だけの接触ではイン・アウトに影響しません。線審は目の錯覚に惑わされないよう、必ずコルク部分の位置に注目して判定します。
またシャトルの受け取る衝撃でコルクが跳ね上がることは実質ないため、シャトルが落ちて触る面は基本的にコルク部分です。これらの基準を理解したうえで、アウト判断の際には明確に大声で「アウト」とコールし、両腕を水平に広げるサインを出すことが重要です。
線審のコールとジェスチャー
線審は判定が確定したら適切なコールとジェスチャーでプレイヤーや主審に伝えます。アウトの場合はハッキリと大きな声で「アウト」とコールし、その際両腕を水平に広げて線際から外側を示す合図をします。インの場合は基本的に声を発せず、右手や指で自分の担当ラインを指し示します。主審のガウンや他の審判がはっきり聞こえるように、コールはできるだけ明瞭な声で行う必要があります。
また、シャトルが落ちきる前にコールをすることは禁止されています。シャトルがコート面に触れた直後に初めて合図を出し、選手に混乱が生じないよう注意します。試合の流れを止めないためにも、線審のジェスチャーはシンプルかつ大きく行うのがポイントです。
判定できない時の対応
線審がシャトルの行方を目視できなかったり、はっきり判断できない場合は特別な合図で主審に知らせます。公式ルールでは、シャトル落下点が確認できないときは両手で目を覆って主審にアピールするよう定められています。これを行うことで主審は映像判定(チャレンジ)などで問題のシャトルを再確認します。
また、大きな音や乱雑な視界で判定に支障が出たと感じたときも、ためらわずに主審に合図してください。線審は自分の判断に自信が持てない場合でも主審の判断に従うことが基本です。なお、極端な例ですが、選手にシャトルが当たっているようなケースでは主審が判断するため、線審は先んじて声を出さず主審の判断を待ちます。
バドミントン 線審になるには?資格やトレーニング

線審として公式試合でジャッジをするには、公認審判員資格の取得が一般的です。日本では日本バドミントン協会が主催する審判員資格検定があり、年齢によって「準3級」「3級」「2級」「1級」とランクが分かれています。18歳未満は「準3級」、18歳以上は「3級」から受験し、以降は実務経験と推薦を経て上位資格へ進む仕組みです。上位級になるほど高度な大会の審判が務まります。
審判員検定会では学科試験と実技試験が行われます。学科では主に協会発行の公式ルールブックから出題され、正確なルール知識が問われます。実技試験では審判経験を試され、主審・線審をシミュレーションした実践形式での判定力やサイン出しがチェックされます。例えば、得点掲示板の記入、選手の氏名確認、ジャッジの訓練などが一般的です。
審判員資格検定の概要
公認審判員資格検定は都道府県協会単位で開催され、年に数回行われることが多いです。検定会に参加するには各都道府県協会へ申し込む必要があります。検定は講義形式のセミナー受講の後に筆記試験と実技試験が組まれることが一般的で、公式ルールやマナー、ゲーム運営の知識を習得する場ともなっています。合格率は比較的高く設定されており、基礎知識をしっかり勉強して試験に臨めばクリアしやすい内容です。
資格取得までのステップ
まずは、審判部門の情報などを参考に検定会日程を調べましょう。初心者の場合は「準3級」を受験するのが一般的です。受験申込後は公式ルールブックを用いて独学やセミナーで学科内容を学び、スクール形式で実技指導を受ける機会があれば積極的に参加します。
講習を受け、本番の試験では実際に椅子に座って主審・線審役を体験する実技もあります。先輩審判からアドバイスをもらったり、検定に出題される典型例(判定例)を繰り返し練習するのがポイントです。合格した後は実際に公式大会でラインジャッジをする機会を増やし、経験を積んでいきます。習うより慣れるという通り、試合経験を重ねることで自信もついていきます。
実技・学科試験の内容
学科試験では、コート図とルール問題がメインです。主に「コートの線の名称や役割」「判定システム」「抗議やマナーに関する規定」などが出題されます。実技試験では役割ごとに必要な動作を問われます。例えば、主審を想定してスコアシートの書き方を示したり、線審役として実際に数枚のシャトルを審判しながら「イン」「アウト」とコールする課題があります。実戦経験が浅い場合は、事前によく練習をして受験することが大切です。
バドミントン 線審に必要なスキルと注意点
線審にはいくつかの重要な能力が求められます。まず、目が非常に良いことが前提です。シャトルはスマッシュ時に時速300キロ以上で飛ぶこともあるため、高速移動するシャトルの着地点を瞬時に見極める動体視力と集中力が不可欠です。線審は長時間にわたって目をラインに定め、集中し続けなければなりません。ちょっとでも気を緩めると判定ミスに繋がるため、常に集中を切らさない忍耐力も求められます。
また、線審は試合関係者(主審や選手)とコミュニケーションを取る場面もあります。例えば、判定に迷いが生じたときは主審にすぐ合図をするため、動作は明確に行わなければなりません。声を出すこともありますので、大きな声でハッキリと発声することや、身ぶりをはっきり示すことも大切です。さらに、審判員として公正であるために、人の目を欺くような仕草や味方なしには仕事をしてはいけません。審判としての責任感やスポーツマンシップをわきまえ、冷静かつ公正に審判を行う姿勢が重要です。
動体視力や集中力の重要性
線審にとって動体視力の高さは必須です。トップレベルのバドミントン選手のショットは非常に速く、数秒で何十メートルも飛んでいくことがあります。そのシャトルを追いかけ、わずかな位置の違いを見逃さず判断できるだけの視覚能力が求められます。試合中は常にシャトルを目で追い、落下点を予測し続ける必要があります。集中力が途切れてしまうと判定ミスが起こりやすくなるので、練習を重ねて集中を維持する訓練も重要です。
瞬時の判断力と冷静さ
線審は瞬時に判断しなければならない場面が多数あります。例えば、ネット付近で接戦となるシャトルや高速スマッシュなど、時間的な猶予がほとんどないときには直感的な判断が必要です。迷ったり躊躇してしまうと正しい判定が出せません。そのため経験を積むほど判断力は磨かれていきます。また、長いラリーの最中や試合の緊迫した瞬間にも冷静でいることが求められます。興奮する選手や応援の声がある場面でも、感情に流されずに落ち着いて審判することがプロの審判には期待されます。
コミュニケーション能力とマナー
線審は主審や他の審判と連携して試合を進行させます。そのため、何かあったときにスムーズに情報を共有できるコミュニケーション能力が必要です。例えば、主審に合図を送るときは大きくわかりやすいジェスチャーをしたり、コールをするときはしっかり声を張り上げるなどの伝達力が求められます。さらに審判員としてスポーツマンらしいマナーを守ることも大切です。選手や観客に驚かれないよう制服はきちんと着こなし、だらしない態度を取らず、審判中は飲食や私語を慎むなどの節度ある行動を心がけましょう。
テクノロジー時代のバドミントン線審

近年、テクノロジーの進化に伴い審判の在り方も変わりつつあります。バドミントン界でも「チャレンジシステム」(インスタントリプレー制度)が導入されており、選手は線審の判定に疑問があれば審判にチャレンジを申し出て映像判定を要求できます。このシステムではコート周辺に設置された高速カメラ映像を瞬時に再生し、「本当にアウトなのか」などを再確認します。導入当初は一部のトップ大会で試験的に使われていましたが、2020年のオリンピック以降は主要大会で広く採用されています。
一方で、テニスでは2025年からホークアイなど電子判定で完全に線審を廃止する動きが話題ですが、バドミントンでは現時点で線審の姿勢は継続しています。バドミントンでは現在のところ全面的な自動判定システムの導入予定はなく、多くの大会で引き続き人間の線審が用いられています。将来的にはより高度な機械判定技術が広がる可能性は否定できませんが、現段階では線審の役割は依然重要です。
チャレンジシステムによる映像判定
チャレンジシステムとは、主にスーパーシリーズやオリンピックなどのハイレベルな大会で利用されている制度です。選手(またはペア)には1セットあたり数回のチャレンジ権が与えられ、シャトルがラインを越えたかどうかを確認できます。チャレンジが申請されると、主審は即座にインスタントリプレーシステムを起動し、複数の高速カメラで撮影された映像を元に再判定を行います。
この技術により、線審の判定が覆ることもあります。たとえば、シャトルのコルク部分がラインをわずかに超えて落ちたケースでも、映像で確認すれば故意ではないと分かることがあります。チャレンジシステムの導入後、線審は「明白な誤審だった場合のみ主審が訂正する」という扱いになっており、最終判断を助ける補助的な役割が強化されています。
電子判定技術の現状
バドミントンでホークアイのような完全自動線審システムが使われるケースはまだ限られています。現状では、映像判定システムの大部分はテニスに比べて普及度が低く、全ての大会で導入されているわけではありません。しかし、主要大会ではカメラ判定が完全にシステム化され、線審の判定と合わせてダブルチェックが行われています。将来的にはバドミントンにもAIや自動追尾技術が導入される可能性がありますが、2025年時点ではまだ試験段階とも言えます。
将来の審判:人間とテクノロジー
今後、テクノロジーの発展により審判方法が変わる可能性はあります。しかし当面は、人間の線審が担う役割がなくなることは考えにくい状況です。選手からのチャレンジシステムは導入されていますが、有料化は進んでおらず、試合中の抜本的な自動判定は普及していません。線審の経験を積むことは、プレイヤーにも新たな視点で競技を学べる機会にもなります。テクノロジーが進化しても、競技の公平性を守る審判員の存在意義は今後も維持されるでしょう。
まとめ
バドミントンの線審は、シャトルのイン・アウトを瞬時に判断する非常に重要な役割です。主審だけではカバーしきれないコートの隅々を見守り、試合の公正さを支えます。線審になるには公認審判員資格の取得や訓練が必要で、優れた視力・集中力と判断力が求められます。また、主審や選手への明確なコールや合図を行えるコミュニケーション能力も必要です。
近年はチャレンジシステムなど映像技術も導入されていますが、2025年現在では人間の線審が果たす役割に変わりはありません。バドミントン線審の仕事には専門的な理解が必要ですが、学べばプレー経験がなくても始められます。試合をより深く理解したい人や競技を支える側に回りたい人は、ぜひ線審に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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