前回は様々な食品中のタンパク質とエネルギーのバランス(PE比)を紹介させていただきました。
今回は様々な国の『食事』のPE比を紹介しつつ、実践的なお話をして、PE比の話を締めくくります。
<様々な国のPE比>
いくつかの国の食事の平均PE比を以下に並べてみました。
こうして見てみると、全然食生活が違うはずなのに、大抵の国のPE比は10~14%落ち着いています。素材や文化は違えども、適切な栄養を摂取するために食事も進化しているのでしょうか。
<PE比を使って食品、食事の質を評価することの問題点>
PE比は摂取エネルギーに対するタンパク質摂取量の割合として、食事の質を評価する手法としてはなかなか便利ですが、弱点も存在しています。
それは、『エネルギーの必要量はその時々に応じて大きく変化するが、タンパク質必要量はあまり変化しないということ』に起因しています。
つまり激しい運動時など、大きくエネルギーを消費しているような場面では、適切なPEが変動してしまうということが起こります。エネルギーがタンパク質に比べて多く必要になってしまいます。
(なかなかありえませんが)基礎代謝のみでものを考えると、一番使える評価方法というところでしょうか(笑) しかし、かなり参考になる値であることは間違いありません。
<問題点を補正していく(運動時の場合)>
実際に運動時のPE比について考えてみましょう。直感的に考えると、運動時はエネルギー消費量(必要量)が増加するのでP>>Eとなりそうですが…。
仮に消費したエネルギーを食事で補給できなかった場合、代わりに身体のタンパク質が分解してアミノ酸を作って、エネルギーを作る羽目になります。従ってタンパク質必要量は増加してしまいます。
逆にタンパク質が消費量(運動によってタンパク質分解が起こります)を満たさないと、エネルギーが十分でも体重は減っていきます。ただ、これはいわゆる痩せるというよりも痩せ細っていくに近い感じでしょうか(笑)
こんな感じで、運動時にはエネルギーもタンパク質も必要量が基本的には増加します。バランスの良い補給方法はどんなものなのでしょうか。
先に正解を述べておくと『平常時と同じPE比で良い』のです。ただし、量は沢山摂る!
どれくらい沢山かというと、消費エネルギーをカバーできるくらい。適切なPE比(10%~14%あたり)であれば、これでタンパク質必要量をちょうどカバーする事が可能です。
バドされる皆さんは、低カロリー高タンパク食を意識されている方も多いかと思います。これは足りないエネルギーをタンパク質由来のエネルギーで補おうという考え方であり、正しく行えば脂質が溜まりにくいですが、注意が必要です。それは、この食事方法がエネルギー必要量をカバーできている前提であるという事。カバーしきれないと、結局身体のタンパク質が分解されてしまいます。
『今日はやりすぎたなー』という時には、いつもより多めに炭水化物を摂取する事も大事であることが、PE比という視点からの考察でも分かります。
ではまた次回。
写真はLin DanとLee Chong Weiの試合の様子。1時間以上も試合が続くこともしばしばあるこの2人ですが、消費カロリーはどれくらいなんだろう。食事でのケアも気になりますね。