皆さんこんにちは、山村です。
前回までは遺伝子の発現、それによって作られたタンパク質の振る舞い方などについてお話してきました。今回からはこうした知識を踏まえつつ、もう少し掘り下げたお話をしていこうと思います。
<タンパク質を構成するアミノ酸、そうでない状態のアミノ酸>
まずは基本事項です。身体の中でアミノ酸は大きく分けて2つの形をとっています。1つはアミノ酸が連なったタンパク質、そして各アミノ酸が個別に存在している「遊離アミノ酸」という状態。
連なっている方は、いくつ繋がっているのかによって呼び名が異なります。例えば2つのアミノ酸から出来たものはジペプチド、3つはトリペプチド、もっと多くなるとポリペプチドと呼ばれます。実際に機能を持つタンパク質を例に挙げると、例えば血糖値調節に非常に重要であるインスリンは、20~50個のアミノ酸から出来ています(厳密には50個全てが繋がっているのではないのですが、ややこしくなるのでここでは省略)。
インスリンの様に、タンパク質と呼ばれる程のサイズになると、ホルモンや酵素として機能を持つようになります。
<遊離アミノ酸の役割 ①:エネルギー供給源として >
遊離アミノ酸は身体の中では約1%と非常に少ないです。つまりほとんどがタンパク質(ペプチドを含む)として存在しているということ。
1つの利用方法としては、エネルギーが不足している時にアミノ酸を糖質に変換し、エネルギーを作り出すこと。アミノ酸は糖質にも、脂質にもなれるということは以前にお話しましたね。タンパク質のように連なった状態からでは、糖質に変換することは出来ないため、一度遊離アミノ酸態にしなければなりません。
…となると、いつエネルギー不足になっても対応できるように、この約1%は常に維持しておきたいもの。実際一定の量を保つ様に調節されており、この1%は「遊離アミノ酸プール」と呼ばれています。プールしておく、という意味ですね。
<遊離アミノ酸の役割 ②:栄養シグナル分子として>
もう1つ、遊離アミノ酸には大切な役割があります。それは情報伝達をしてくれるということ。
タンパク質を合成するには、勿論素材であるアミノ酸が必要ですし、体内にアミノ酸が沢山あるとタンパク質に変換されたり、エネルギー、脂質に変わっていきます。これは「量的なメッセージ」といったところでしょうか。素材が沢山あって(邪魔だから)早く作ってよー、という感じです。
一方、こんな話もあります。皆さん「分岐鎖アミノ酸」というアミノ酸をご存知でしょうか。スポーツの世界ではしばしば重要視されているアミノ酸です。
アミノ酸はNH2-とCOOH、Hがくっついた炭素を持つ基本構造をとっていて、上図で言えば真ん中より上の部分を「側鎖」と呼んでいます。
この側鎖の違いによって、アミノ酸の名前が変わります。分岐鎖アミノ酸は、見た目の通り、側鎖部分が枝分かれしてるのが特徴。
同じアミノ酸ですがこちらはグルタミン酸。見ての通り(左半分が側鎖です)、枝分かれがありませんね。
さてそんな分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid の頭文字から、よくBCAAと呼ばれます)ですが、これらは「単独で身体に働きかけ、タンパク質合成を促進させる事」が分かっています。
こっちは先程と比較して「質的なメッセージ」、というところ。実際、素材の遊離アミノ酸量が一緒でも、BCAAを摂取することでタンパク質生合成は活性化します。
次回からその詳しいメカニズムをご紹介していきます。長くなってしまったので、今回はこの辺で。。
では今週も健康に気を付けて頑張りましょう!