第10回:大学教員からみたバドミントン(3)

 

こんにちは、西島です。

先週に続き、「授業教材としてのバドミントンの魅力」として、私が「バドミントンの授業を通して教えたいと思っていること」を紹介させていただきます。

3.失敗してもOK! 失敗を笑い飛ばす!

先週は、「1.やっつける!」、「2.やっつけられて、楽しい」と、バドミントン(スポーツ)の競技性を重視した内容でした。「バドミントン(スポーツ)なんだから、勝敗にこだわろうよ」という考え方は、たとえ体育の授業であっても大切だと考えています。一方で、「失敗してもOK!」という考えも、私は大切にしています。「失敗=してはいけないこと」と考えている学生も多いので、「所詮、バドミントン(スポーツ)なんだから、失敗したっていいじゃん。バドミントンで失敗したところで、人生が狂うわけでも、友達から嫌われるわけでもない。授業の成績が悪くなることもない。」など、具体的な言葉にして、伝えるようにしています。

そして、「失敗を笑い飛ばすくらいのメンタリティーは、持っているといいと思うよ」といったことも、伝えたりします。ネット前にシャトルが上がった絶好のチャンスで、空振りしてしまった。その瞬間、コート上だけでなく、コートの周りにいる全員が大笑いし、空振りし た本人も頭を抱えて笑っている。そんなシーンが、バドミントンをしているときに盛り上がる瞬間ですよね。でもその瞬間、空振りした本人が深刻な顔をしていれば、周りは笑うに笑えず、冷めた雰囲気になってしまいます。

バスケットボールやバレーボールなど他の球技と比べても、バドミントンでは一人一人がプレーに参加する(シャトルを打つ)機会が格段に多くなるので、その分、失敗する機会が何回も訪れます。しかも、「シャトルが相手コートに返らない」という形として、本人がその失敗をはっきりと自覚できてしまいます。これも、バドミントンの大きな特徴だと思います。失敗するたびにネガティブな思考に陥っては、特に運動が苦手な学生は耐えられなくなってしまいます。逆にクラスの中に、失敗を許す雰囲気、失敗を恐れずにチャレンジできる雰囲気を作り出すことができれば、たとえ運動が苦手な学生であっても、さらに本気でバドミントンに参加するようになる、と感じています。

「バドミントン(スポーツ)なんだから」と勝敗にこだわらせながら、一方では「所詮、バドミントン(スポーツ)なんだから」と失敗や負けを認めたりと、伝える内容が全く異なるのでとまどう学生もいるかもしれません。でも、私は自信を持って、「ダブル・スタンダード」で授業を進めます。ひとつの基準(価値観)に絞るということは、別の基準(価値観)を否定しなくてはいけなくなります。私はそんなもったいことをするよりも、相反する基準(価値観)を認めるという寛容さを大学生のうちに身につけて欲しいと思っています。

「失敗は、敗(ま)けを失うと書く。次に敗けないように、今、失敗をするんだ。」

これは以前、講演に招待されて北海道に行った際、スポーツ少年団で小学生を指導されている方から懇親会の席上で伺った言葉です。伺った瞬間に鳥肌が立ったのを、今でも鮮明に覚えています。勝敗にこだわる大切さと、失敗を許す寛容さ。その「ダブル・スタンダード」を明確に示している言葉ではないでしょうか。

本日の最後は、国際連合の事務次長であったアドルフ・オギ氏(元スイス大統領)の言葉を紹介して、終わりにしたいと思います。国連は2005年を「スポーツと体育の国際年」と定めました。その目的は、「教育、健康、開発および平和を促進する上でスポーツと体育が果たす重要な役割について国際社会の理解を高めること」でした。日本ではほとんど知られることなく終わってしまったのが、本当に残念でなりません。興味のある方は是非、リンク先を読んでいただければと思います。東京オリンピックに向けて、こういう活動が再度展開され、より多くの方々に伝わると良いですね。

「若い男女はスポーツでミスを犯すことで、人生の糧となる貴重な教訓を学ぶことができます。健康的で楽しい活動から、社会的な行動を身につけ、社会に溶け込み、自分を知り、他者を尊敬することができるようになります。若者はスポーツを通じ、積極的に社会人となるための準備を行うのです。」

さて、「大学教員からみたバドミントン」ということで、3回にわたってバドミントンに対する私の考えを紹介させていただきました。競技としてのバドミントンから離れてみても、また新たなバドミントンの魅力があると思います。私が大学教員を務める一番の根底には、「多くの学生が、積極的に運動・スポーツを実践する人になってほしい」という想いがあり、バドミントンの授業はその絶好のチャンス(場)になります。しかしながら、さすがに一回の授業で担当できる学生数にも限界があります。そこでやはり大切になるのが、科学(サイエンス)の立場から、運動・スポーツの価値観を高めることだと考えています。次回はまた話を戻して、「身体不活動」という点について考えていきたいと思います。

(バドミントンに関する情報も、また機会をみて書きたいと思います。)

西島 壮

 

 

 

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西島壮(にしじま たけし)バドミトンの新たな魅力について研究しています

投稿者プロフィール

生年月日:1978年7月23日
身長/体重:175 cm/63 kg
血液型:B型
出身地:長野県

略歴:
1997 長野県松本深志高校 卒業
2001 筑波大学 体育専門学群 卒業
2006 筑波大学大学院 人間健康科学研究科 体育科学専攻 修了
    博士(体育科学)取得
2006 筑波大学大学院 研究員(COE)
2007 財団法人国際科学振興財団 専任研究員
2007 カハール研究所(スペイン) 外国人若手研究員
2009 首都大学東京 助教

競技歴:
1999 全日本学生バドミントン選手権大会 ダブルス(2回戦)
2012 全日本教職員バドミントン選手権大会 30代ダブルス準優勝

専門分野:
運動生理学、運動神経科学

研究室ホームページ:
www.comp.tmu.ac.jp/behav-neurosci/

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