みなさん、はじめまして。西島 壮(にしじま たけし)です。
このたび、バドサイエンスということで情報提供させていただくことになりました。現在は、首都大学東京(旧、東京都立大学)で教員を勤めています。いきなりですが、まずはお詫びから。
バドサイエンスというテーマから、そして大学教員による情報提供ということで、多くの方々が「バドミントンの上達にはどんな練習が科学的に有効と証明されているのか」といった情報を期待されるかと思います。しかし大変申し訳ないのですが、私の話ではバドミントンがその主役にはなりません。
もちろん、私自身もバドミントンが大好きで、今もプレーをしています。また、授業でバドミントンを教えたり、バドミントン部の顧問を務めたり、また地域の方々にバドミントンを教えたりと、バドミントンに関わる仕事もしています。しかし、大学教員として一番大切な仕事、すなわち研究のテーマは「運動は脳に良い!」ということを科学的に検証することであり、決してバドミントンの研究者というわけではありません。
そこで、私はバドミントンを下の図のようにとらえて、お話させていただきます。
バドネットをご覧のみなさんは、競技あるいはレジャーとしてバドミントンをされている方がほとんどだと思います。しかし、バドミントンだけがスポーツ・運動ではありません。そしてスポーツ・運動は、身体活動の一部となります。身体活動とは、通勤や通学で歩いたり、掃除機をかけたり、重たい荷物を運んだり、といった身体を使った全ての活動を含みます。
現在、国際的な社会問題のひとつに、身体活動量が十分でない人(身体不活動と呼びます)、つまり上の図では一番外側の円の中にも入ってこない人が激増していることがあります。身体不活動がさまざまな病気の根本原因になっているため、いかに身体を動かすかは、我々現代人にとって非常に大切な課題になります。
みなさんは、「身体活動量をしっかり確保しなくちゃ」と思いながらバドミントンをしている訳ではないと思います。逆に、好きでバドミントンをプレーしているお陰で身体活動量が十分に確保されているのであれば、これは健康にとって極めて理想的な状態です。問題は、身体不活動である人たちをどうしたら活動的にすることができるか、さらには、そのような人たちはなぜ積極的に身体を動かそうとしないのか、を考えることです。
大切なのは、スポーツ・運動の価値を高めることです。
その新たな価値観として、「運動は頭に良い!」ということは非常に魅力的だと思います。
この20年間、世界中で運動が脳にどのような効果を及ぼすかが盛んに研究され、その結果、運動で脳が劇的に変わることが明らかにされています。たとえば、「運動をしている高齢者ほど認知症にかかりにくい」ことや、「運動をしている子供ほど脳機能が高い」ことなども、最近になって報告されています。 そこで私からは、「運動と脳」に関する研究の成果を紹介させていただきながら、バドミントンをすることを改めて考えるきっかけにしていただけたらと思っています。
ノーベル平和賞を受賞したマララさんのスピーチは、非常に感動的でした。世界では未だ、教育を受けられない子供が大勢います。一方、この日本では誰もが平等な教育を受けることができます。そんな恵まれた状況の中で、「スポーツをしていれば、勉強はあまりしなくても良い」という価値観があるとしたら、マララさんは何を思うでしょうか。
バドミントンをしている子供は、勉強もできる!
バドミントンをしている社会人は、仕事ができる!
バドミントンをしている高齢者は、明朗快活!
2020年の東京オリンピックが開催される頃に、こんな価値観を共有することができていたら、そしてそれをバドミントンから発信することができたら、素敵なことだと思いませんか?
マララさんの言葉「Let us build a better future right here, right now.」をお借りして。
Let us build a better future through Badminton.
これから、よろしくお願いいたします。