新入部員を自立的に成長させる取組み

こんにちは。樋口です。

部活動では、4月からの前半は、新入部員が基礎を覚えていく時期です。

しかしながら、嬉しい悲鳴というか、部員が入りすぎて、コートも教える人材も足りないわでテンヤワンヤ。

とりあえず、最上級生が引退する夏までは、走らせとけばいいか?ということにもなりかねません。

中高生は実質2年ちょっとしか期間がありません。最初の半年くらいも基礎技術指導ができれば、こんなに効率よいことはありません。

今回は、色々多忙なこの時期に、認知行動療法的なスキルで、生徒さん自らが成長できる手法を試みておられる神奈川県横浜市泉が丘中さんの取り組みをご紹介致します。

最後までお付き合いの程、宜しくお願い致します。

 

(ステージ1)
【新入部員が基礎をすぐ学びにくい理由】
1年間で部員人数が最大になる時期なので、場所も教える上級生も不足がち

最上級生が引退するのは6月中旬〜8月になりますので、新入部員が入る4月から8月くらいの間は3学年が同居します。

したがって、部員人数は最大になります。3月までは、旧2年生と旧1年生と2学年しかいなかった場所に、大量に新入部員が入ってくるため、場所も面倒を見る生徒も不足がちになります。

加えて、この時期は新3年生引退前の最後の公式戦が入っていますので、試合練習に時間や場所を割かれてしまいます。

このような理由で、新入部員に基礎を教える人材も場所も不足するため、夏までは外でランニングやトレーニングといったメニューが発生しがちです。

チェックリスト2

 

(ステージ2)
【新入部員に自ら技術を学びに行かせる試み】

いくら人数が多かったり、場所が少なくても全く空き時間がないということは考えにくいものです。

それらのスキマ時間を利用して新入部員に技術を自ら学びにいかせるという手法をとっておられるのが、上記の泉が丘中顧問の高橋氏です。

ただし、まだいろんな意味で未熟な中学生です。新2年生に「1年に素振りを一通り教えといて」といっても、あるいは何も知らない新入部員に、ただ素振りやっといてだけでは中々思ったようにはいきません。

そこで高橋氏が考案したのが、下添の課題リストです。

《課題シート》

課題シート2018(PDF版)

課題シート201801 課題シート201802

上の方から、カテゴリーごとに細かくやるべき内容が書いてあるので、生徒さんが迷うことがありません。これらの項目をやっていけばいいということもわかります(認知)ので順番にこなしていくことができます。

そしてチェック項目として、本人、先輩、顧問というように各項目に付いています。
新入部員は、わからない技術については、スキマ時間などにまず先輩を掴まえて、内容やどのようにやれば良いのかを聞くことになります。

この課題リストの活用ポイント及び狙いについて、高橋氏に直接聞いてみました。

ーー《高橋氏談》ーー

大切なことは

1.自ら先輩や指導者に聞きに行く

2.課題と達成度を明確化すること

3.達成度を確認するために、個人⇨先輩⇨顧問と、難易度を上げて行くこと

です。

この手順をふまえることで、選手は課題解決能力を身につけます。

そして、同じ課題にもレベルがある(自分でできていると思っている<先輩にできていると認められる<顧問にできていると認められる)(習熟度)と言うことを知り、自己満足ではなく先輩や顧問に認められたい(承認欲求や向上心の芽生え)から、技術の向上や練磨をするようになります。

さらに高みを目指すと言うことです。

この姿勢を入部初期に養っておくことで、選手としての基礎を養っています。また、この基礎が身につくと、練習の為に不必要なことをすることのムダさに気づくことができ、余計な問題を起こさなくなります。

ここがこの試みの大切なところです。

ーーーー

チェックリスト3

 

(ステージ3)
【より正確な現状把握(自己認知)の構築】

上記、高橋氏の「大切なこと」2、3にあるように、このチェック表を作成していると、本人は自分がどの程度、必須の基礎技術を身につけているかを視覚で正しく捉えることができます。

自らの行動や上達の現況を正しく認知することができるということになります。

何ができていて、何が足りていないのか?これらが正しく把握、認知できることは、今後の活動への重要な指針になる分、非常に大切なことだと感じています。

人間は自分自身の姿や行動などは、視覚的に外部から見ることができませんので、普段の行動や生活でも明確に現状などを、脳内で作り上げたイメージ像から大雑把に認知している場合が多いと考えます。

ですので、リストのチェックや書くことにより、脳内で正しい現状把握(自己認知)を構築するということは現実に沿った状況把握に効果が期待できると考えます。

このようにして、新入部員が限られた時間内でより効率的に上達、成長を図れる試みは秀逸と考えます。

 

【備考】

このリストについては、教育指導要領(学校では最低限これは教えてくださいねという国のガイドライン)に記載されている「CAN-DOリスト」という手法の応用に相当します。

この手法の課題としては、文字がリストに沿って大量に羅列してあり、とっつきにくい。リストを作ったはいいが、活用もメンテもされていないなどがあります。

今回の課題リストは、明解な短文、色紙を使用など、生徒が使いやすいように工夫されている点が秀逸と考えます。

私が泉が丘中さんにお邪魔した時も、それほど親しくない大人の私に生徒さん達がどんどん積極的に質問をしに来ました。
(なかなか、中学生では敷居が高い行動です)

これは上記のような試みの成果であると確信しております。

上記チェックシート、是非ご活用ください。

今回も最後まで、お読みいただきありがとうございました。

次回は、「回内動作が上手くいかない!どうして?(グリップ握り方編)」です。

※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点ご理解の上でお読み、お試しくださればありがたいです。

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樋口 孝雄バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)

投稿者プロフィール

バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)
1966年2月4日生
東京都国分寺市在住
実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ

競技歴:1982~2001年
指導歴:2002年~

私のバドミントン生活は高校から始まりました。運動系全般が苦手な私でしたが、何かスポーツをやりたくてバドミントン部を選びました。
当時、技術指導者はいませんでしたので、仲間よりワンテンポ遅れてしまう自分が、どうしたら理論的に技術が身につくかを、常に考えるようになっていました。この頃の背景がベースになり、今の私の技術指導スタイルが確立されたといえます。

元来、教えることが好きなこともあり、十数年前に小学生の指導を始めました。時間が許す限り、バドミントンのみならず、他競技のDVDや書籍etc.情報を集めては分析・検証し、よりシンプルでわかりやすいスキルアップ方法とは何か、知識と経験を積み上げてきました。現在は、技術指導者のいない中学生を中心に、学齢前から成人までのサポート活動をしております。

同じ指導でも、すぐ体現できる人もいれば、時間のかかる人もいます。指導する側にも、個性を生かした工夫が求められていると、身につくまでの道のりが遠かった私自身の体験から、感じています。

これまでの蓄積と、今後のさらなる追求を少しでも共有でき、特にお悩みを抱えている方々の微力ながら、お役に立つことができれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

競技歴詳細:

東京都立小平西高→法政大学バドミントン同好会72

主催指導活動:

「癖動作矯正指導法」研究及びレッスン
→(http://minton.blog.jp/archives/306166.html)
西国分寺バドレッスン for 中高生 代表者
→ (https://minton.jp/Group/detail/158)
バドミントンNPO団体 東村山フリューゲルス代表者

外部指導活動(東京都内):

実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ
堀越高等学校 男子バドミントン部
練馬区立中村中学校
東久留米市立中央中学校
他中高計8校、一般3団体

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