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ミスはしちゃいけないの?最近わかってきたこと
- 2016/9/12
- バド♪Remaking, 日替バド定食
こんにちは。樋口です。
中高試合のコーチ席に座っていると、時々大きな声が聞こえてきます。「オイ!なにミスしてんだ!!入れろ!」
指導者側、選手側双方の必死な気持ちはよくわかります。
さて、ミスをするということは選手に対してどんな影響を及ぼすのでしょうか?
今回は、脳科学の視点から考察してみたいと思います。
最後までお付き合いいただけたらありがたいです。
(ステージ1)
【運動プログラム作製】運動のプログラム構築に関わるのは、大脳皮質
身体をどう動かしたらよいかという制御プログラムは、大脳の上部部分(運動野)で作製しています。筋肉や筋肉と骨を接着する腱にはセンサーが付いていて(筋紡錘、腱紡錘)、常に筋肉などの動きをモニタリング(検知、監視)しています(筋肉などが伸びすぎて切れたりするのを防止するためです)。
筋肉等のセンサーの運動情報や、目からの視覚情報、耳からの音声情報、バランス情報など様々な5感情報を神経(感覚神経)を伝って大脳まで伝え、脳内の各部位が連動して運動のプログラムが作られます。
(ステージ2)
【運動プログラムの格納】運動プログラムの格納(記憶)に関わるのは、小脳
大脳で作製された運動プログラムは、後頭部と首後ろの境目にある小脳に「手続き記憶」として格納されます。
小脳に格納される手続き記憶は、とても忘れにくい記憶と言われています。俗に身体で覚えた技術などといわれます。例えば、自転車は一旦乗れれば、長期間乗らなくとも乗れなくなるということはありません。これも小脳の手続き記憶のおかげです。
(ステージ3)
【記憶のメンテナンス】 小脳は、既存運動情報をミスに基づき修正する (=上達)
いくら手続き記憶が忘れにくいとはいえ、自転車をノンビリと乗るだけと違い、競技バドミントンの動きや技となると、非常に繊細な運動プログラムの記憶が必要になります。
その質を担保するためには、メンテナンスが欠かせません。バドミントンも怪我などで数ヶ月できないでいると、微妙なコントロールが乱れたり、スピードが落ちたりします。
その運動技術の記憶のメンテナンスが、小脳の中で行われているというのが、最近の研究でわかってきています。小脳の中には、運動の記憶に関与する大きなサイズの脳細胞があります(プルキンエ細胞)。
この細胞と大脳から送られてくる情報を受ける小さめな細胞(顆粒細胞)との繋がり(並行繊維)によって運動の記憶が維持されています。
そこにもう一本の系統の脳神経ネットワークが繋がっています。これが、運動記憶を修正する情報を送信する「登上線維」と呼ばれるもので、延髄から伸びて、小脳に接続しています。(小脳内で、運動記憶に関与するプルキンエ細胞に接続している)
このように、小脳に大脳からの運動の情報と延髄経由でミスした時などの修正情報が入ることで、運動の上達が達成されます。
(ステージ4)
【運動記憶の修正形態】無駄や非効率的な運動情報を送信する神経ネットワークを遮断する形で、運動記憶を洗練(上達)させる。
運動記憶をより質の高いものにする方法としては、消去法が採られています。小脳のプルキンエ細胞に沢山接続していた大脳由来の神経繊維(並行線維)が、延髄からミスの情報を受けとることで、無駄な神経経路や非効率的な神経経路の接続がカットされます。
このように効率的な神経ネットワークだけが残ることで、情報送信の効率化が図られ、結果、運動の上達(学習)が発生すると考えられています。
(ステージ5)
【ミスの役割】ミスは運動上達を担う重要な要素
上記のように失敗したり、ミスをした行動が、運動の上達に関わる重要な要素だということが研究で明らかになってきています。
練習でのミスはしない方向で考えるよりも、ミスを恐れずに思い切っていろんな技術にチャレンジすることが大切なようです。また試合ではミスをしないに越したことはないですが、長い目で見ればミスを怖れるよりも、ビデオや自宅の鏡など視覚によってミスの原因を考え、次の試合につなげる方が脳科学的には理にかなっているように考えます。
今回も最後まで、お読みいただきありがとうございました。
次回は、「フォアで打点が低くなった球にもしっかり力を伝えたい!どうすればよい?」です。
※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点、ご理解の上で、お読み、お試しくだされば、ありがたいです。