子どもが大人になるに従ってドリブンクリアーが効かなくなる?

こんにちは、樋口です。

過日、とある中学生2年生男子のシングルスの試合を見ました。フットワークが速く、前のタッチの速いプッシュ、強烈なスマッシュが印象的なプレーヤーでした。

その特長にあわせて、配球は低くて速いドリブンクリアーをサイド奥に放ち、相手を遅らせたりして、甘い球を速いスマッシュしてきます。

この試合はそんなこんなで、あっという間に勝利しました。

しかし、次の試合をふと見た時、彼は苦悩の表情を浮かべていました。スマッシュを打たれたり、カットされたりして、防戦一方で、(よく粘っていましたが)彼自身も、コーチも全くどうしたらよいのかわからない様子で、一方的に負けてしまいました。

原因は何でしょうか?推理してみましょう!

今回も最後までお付き合いください。
よろしくお願い致します。

跳びつき3

 

◯失点の主因は、ドリブンクリアーありきの配球

問題を改善するキーワードは、中学2年男子ということです。
大人になるに連れ、男性ホルモン(テストステロン)が体内に放出され始め(第二次性徴期)背が伸びるのに続くように、少しづつ身体を動かすことに特化した大きな筋肉(アウターマッスル)もついてきはじめます。

小学生時代や中学1年生の頃は、身体の形(姿勢)を維持する蝶番のような役割の小さい筋肉(インナーマッスル)がメインです(個人差はあります)。

ドリブンクリアーなど、低くて速い球で煽られると、元来足の速い子やラケットワークが器用な子、徹底的にフットワークを叩き込まれた子は、対応できますが、そうでない子は中々太刀打ちできません。

しかし、中学2年生くらいになると、背が伸びるのと同時に、少しずつですが大きな筋肉がつき始める子が出てくる分、ジャンプ力もついてきます。

背が伸びて、ジャンプ力がつく、そうすると、速いけれども低い球は、ステップ&ジャンプで跳びつかれて、スマッシュなりカットなりを打たれてしまいます。

ここに気づかず、ドリブンクリアーありきの配球で、クロス、ストレートと打っていると、跳びつきで、途中で触られて、逆襲を喰らってしまうのです。(特にクロスは頭上を通過するので、触られるリスクが大きい)

 

◯副因は、その選手自体が跳びつき攻撃できないこと

前段の主因の意味が理解できていないと、自分自身が、相手からアタックロブなど低くて速い球で振られた時に、クロスステップ&低い打点でのドライブ、ロブ、ネット前への繋ぎ球を多用してしまいます。

こうなると自分の得意な速攻攻撃も、逆に相手に使われて、失点を繰り返してしまいます。

跳びつき1

 

◯なぜ、後ろを低い打点で繋いでいると、失点に結びつきやすいのか?

①【時間的視点】 少しずつ、こちらがレシーブできる時間を削られてしまい、追い込まれる。

こちらがシャトルを打つまでの時間を設定できるのは、相手プレーヤーです。なぜなら、シャトルは必ず相手のラケット面から出るからです。

相手が、こちらの打つために必要な時間を短くしてやろうと思えば、速く床に着く球を打ちますし、そうでなければ、遅く床に着く球を打ってきます。

つまり、ドリブンクリアーやアタックロブなどは、明らかにこちらの打球必要時間を減らしてミスを誘うという相手の意図になります。

それをこちらが、打つのに必要な時間を稼ぐため、打点を低くして打てば、同時に相手にも次の球を安定した姿勢で打つ時間を与えてしまいます。

②【返球コースの削減的視点】 打点が後ろで且つ、低くくなると、打てる球種が2個くらいに減ってしまい、相手がコースを絞りやすい。

打点が高い状態ならば、スマッシュ、カット、ドロップ、ドライブ、クリアーなどの球種に加え、ストレート、クロスなどのコース、球速、フェイントなどを絡ませて、何通りもの攻め方ができる分、レシーバーは、多くの箇所を守らなければなりません。

当然、球筋を絞るのはより厳しくなります(相手が打てる球種やコースにも影響されますが)。

しかし、打点が低くなれば、スマッシュやドロップは物理的に打てないばかりか、体勢によってはクロスなどのコースも選択肢から外れる可能性も高くなります。

すると相手は、次の球で2〜3種類程度のコースに絞れるので、少ない箇所を守っていればよく、ミスの減少や予測を立てた攻撃が可能になり、圧倒的に有利になります。

要は相手の返球退路を減らせば、将棋でいう「詰み」の状態になりやすいという考え方です。

 

◯対策

①クリアーなどで相手を後ろに揺さぶる時も、相手が跳びついてシャトルにギリギリ届かない高さを調整する

②打球が相手の身体から離れていくストレートの割合を増やし、相手にジャンプ等で打球に触られるリスクを減らす

③クロスは、シャトルが相手の身体に近づいてから抜けていく球である分、ストレートよりさらに高さを上げて調整し、ジャンプや伸び上がりで打球に触られないようにする。

④自分が低い球で煽られた時、ツーステップ&跳びつきなどで、インパクトまでの時間を短縮し(タッチを速くする)、相手が返球で安定的な姿勢を作る時間を減らす。

跳びつき2

また、打点が高くなる分、多彩な球種やコースなどで相手になるだけ多くの選択肢を意識、守らせるようにする。

(ジャンプ(跳びつき)のコツは、2016/2/1付コラム「跳びつきが上手くできない!その原因は?」をご参照ください。)

今回も、最後までお付き合い戴きましてありがとうございました。

 

次回は、「 Misson Impossible : オーバーヘッドのインパクト時にしみついた癖を矯正せよ!~頭の縦振り・お尻の突き出し・両足揃って膝が伸びてしまう」です。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点、ご理解の上で、お読み、お試しくだされば、ありがたいです。

 

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樋口 孝雄バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)

投稿者プロフィール

バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)
1966年2月4日生
東京都国分寺市在住
実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ

競技歴:1982~2001年
指導歴:2002年~

私のバドミントン生活は高校から始まりました。運動系全般が苦手な私でしたが、何かスポーツをやりたくてバドミントン部を選びました。
当時、技術指導者はいませんでしたので、仲間よりワンテンポ遅れてしまう自分が、どうしたら理論的に技術が身につくかを、常に考えるようになっていました。この頃の背景がベースになり、今の私の技術指導スタイルが確立されたといえます。

元来、教えることが好きなこともあり、十数年前に小学生の指導を始めました。時間が許す限り、バドミントンのみならず、他競技のDVDや書籍etc.情報を集めては分析・検証し、よりシンプルでわかりやすいスキルアップ方法とは何か、知識と経験を積み上げてきました。現在は、技術指導者のいない中学生を中心に、学齢前から成人までのサポート活動をしております。

同じ指導でも、すぐ体現できる人もいれば、時間のかかる人もいます。指導する側にも、個性を生かした工夫が求められていると、身につくまでの道のりが遠かった私自身の体験から、感じています。

これまでの蓄積と、今後のさらなる追求を少しでも共有でき、特にお悩みを抱えている方々の微力ながら、お役に立つことができれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

競技歴詳細:

東京都立小平西高→法政大学バドミントン同好会72

主催指導活動:

「癖動作矯正指導法」研究及びレッスン
→(http://minton.blog.jp/archives/306166.html)
西国分寺バドレッスン for 中高生 代表者
→ (https://minton.jp/Group/detail/158)
バドミントンNPO団体 東村山フリューゲルス代表者

外部指導活動(東京都内):

実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ
堀越高等学校 男子バドミントン部
練馬区立中村中学校
東久留米市立中央中学校
他中高計8校、一般3団体

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