- Home
- パワーは、どうやってシャトルまで伝えればいいの?
パワーは、どうやってシャトルまで伝えればいいの?
- 2015/12/7
- バド♪Remaking, 日替バド定食
そのプレーヤーは、身体が硬いこともあり、スイングするときに、全身が直線的になった感じになっています。周囲には、ムチのように身体をしならせたらっと言われていますが、中々上手くいきません。とりあえず、腕力はあるので、まあいいかと考えています。
◯ムチのような動作とは?なぜ、大切なのでしょうか?
ムチは紐状になった部分が、湾曲しながら、動作します。簡単に言うと、ムチの紐の上をエネルギーの波(ウェイブ)が、手元から、先端に向かって伝わっていきます。
このような、エネルギーのウェイブを人間の身体でも作れると、効率的にエネルギーが伝わると考えられるのです。
ただ、ムチが区切りなく、一体化したモノであるのに対し、人間の身体は、関節があって区切られているというところが主な違いと考えます。その関節という区切り部分でエネルギーのロスが発生しやすいからです。
バドミントンのオーバーヘッドフォームを、ムチのように、効率化 (自然界法則の力を利用して、より大きなスイング速度を獲得しようという試み)するためには、「運動連鎖 (キネティック・チェーン)」という、力学法則の利用が不可欠です。
スイングのエネルギー源 (車でいえば「エンジン」) は、テイクバック前に軽く跳ねて、脚を床に着地させたときや、体重を床にかけたときの、床からの反力(跳び箱の跳ね板と同じ原理で、着地や身体を沈めて、体重を床にかけると、それと同量の力が床から脚にかかってきます。普段は、意識できないと思いますが、もし、その反力がないとしたら、重力で身体が床や地面にめり込んでしまいます!)と、
骨盤周りの筋肉群 (お尻(大殿筋)、太もも表部(大腿四頭筋)、太もも裏部(ハムストリングス)、背筋(広背筋)など)です (肩ではありません。なので肩に力を入れて振り回しても、スピードはさほど上がらず、逆にシャトルコントロールが乱れます)。→<参考: 2015/11/05記事>
骨盤を左に捻転して発生したパワーが、上に上がっていき、肩甲骨を経由して、ラケット方向に腕を上がっていきます。
腕は、関節が多いため、それらを通過する際に、エネルギーが逃げやすくなります。しかし、「二重振り子の原理」という自然法則を利用できれば、逆にエネルギーを増幅 (パワーアップ)できるのです。
昔、ブルース・リーというカンフーアクション俳優が、「ヌンチャク」という武器を持っていたのを覚えているでしょうか?
非常に操作が難しく、素人が振り回すと、先端の棒が自分をヒットして、とても痛い目に会います。
腕というのは、このヌンチャクと類似した構造をしています。片方の棒が「上腕」、もう一方の棒が「前腕」、上腕側の棒の端っこが「肩関節 (肩甲骨)」、棒と棒の間が「肘関節」に相当する、というわけです。腕の場合は、さらに、「手首」「手首関節」があるわけですから、まさに2鎖3棒式のヌンチャクというわけです。操作が半端なく難しいのです。
前腕回内も、じつはこの「運動連鎖」の一部なのです。手首関節は、肘関節に比べて、多方向に自由に動くことができる構造ですので、この運動連鎖の難しさの中核をなしています。そのため、最初に取り出しレッスンをしてしまうというわけです。
さて、前置きが長くなりましたが、「サイエンス チャンネル」という、youtubeの動画サイトに、日体大の学者のかたが、この運動連鎖と、二重振り子の原理 (関節をエネルギーが通過する時に、増幅(パワーアップ)させる方法)について、力学的な解説をされていますので、参考に御覧ください。
(懐かしい選手が出ています。)
動画の、8分00秒~13分5秒に、運動連鎖と、二重振り子の原理の解説があります。
以上のように、打力の源として、供給されるエネルギーは、テイクバックで、足を床に着いた時、床から跳ね返ってくるパワー(床反力:体重の約2〜3倍)と、大きな筋肉の多い下半身、特に骨盤周りの筋肉群(お尻周り(大臀筋)、太もも(前面:大腿四頭筋、裏面:ハムストリングス)など)が発生するパワーです。
それを、胴体(体幹部)→肩甲骨→上腕→前腕→手→ラケット→シャトルというように上へ上へと順番に伝えていきます。グラフにすると、見事に右上りの階段型になります。
動画にあったように、下半身に近い身体の部分から、パワーを先端方向に伝えていくのは(例:上腕→前腕、骨盤周り→体幹)、下半身に近い部分のボディパーツが、動きを止めることによって、行われます(二重振り子の原理)。
(例:肘が伸びていくことで、スイング半径が長くなり、上腕のスイングスピードが落ちる→パワーが前腕に伝わり、前腕が動き出す。:→「角運動量保存の法則」)
◯では、この運動連鎖(キネティック・チェーン)を、初歩段階で具体的にどのように学んでいけばよいのでしょうか?
シャトルの重さ(質量)が軽いバドミントンは、指先まで使えるため(➔参考)、シャトルにパワーが辿りつくまで、多くの関節を経なければなりません。関節が多く、構造が複雑な腕〜ラケット部分間の運動連鎖を、先ずは覚えることが効率的と考えます(グリップの握り方(イースタングリップ)、前腕の動かし方(前腕回内)、右肘の停止位置と打点の認識(ゼロポジション))。
練習手順案としては、以下の4つです。
①グリップ(ハンドル)の握り方構築 (→2015/10/26コラム)
②前腕回内動作の構築
③緩い運動連鎖(全身)の構築
④詳細な運動連鎖(全身)の構築
具体的な練習方法は、また別の回に改めさせて戴きます。
次回は、「なぜ、サイドのスマッシュに届かないの?」です。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点、ご理解の上で、お読み、お試しくだされば、ありがたいです。