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チャンス球は、なぜ引っかけやすいの?
- 2015/11/9
- バド♪Remaking, 日替バド定食
こんにちは、樋口です。
ダブルスで、そのプレーヤーは、強烈なスマッシュ、相手はレシーブで当たり損ね、そして、甘い球がハーフ(コート縦の半分位の位置)より若干前に、フラフラと上がりました。
まさに、チャンス到来!もらった!そのまま、前に突っ込んでもう一発決めのスマッシュ!!と、シャトルは、ネットに突き刺さってしまいました。
本人は、絶対決まると思っていた分、ガックリと、大きなメンタル的ダメージを受けます。逆に相手は、絶対絶命と感じていただけに、大喜び、モチベーションが向上します。
しかも、一回それをやると、同じような状況で、何回もミスを繰り返してしまいます。
このような経験は、一度は記憶にあるのではないでしょうか?
◯さて、なぜこのようなことが、起きてしまうのでしょうか?
果たして、チャンス球をミスしてしまうプレーヤーは、メンタルが弱いのでしょうか?
今回は、最近、進歩著しい脳科学的な視点から考察してみます。
人間の脳は、先ず、外部から入ってきた情報 (今回なら、「チャンス球が来た!」という情報)を、自分にとって、利用価値があるか、否かを、前頭葉(目の上辺りから、頭の前部分の位置。図❶)という部分で、判断します。
そして、価値のある情報だと判断すると、脳の中枢部に神経ネットワークを使って、情報を送り、過去の記憶(以前、チャンス球をスマッシュで決めた、類似ケース)を検索し(側頭葉「海馬」という、記憶を管理する部分(耳上の奥あたりにある。図❾)が、おこなう)、参照しながら、処理方法を決定します。
その情報は、3D空間のどこにシャトルがあるか、どこに移動するかなどのナビゲーション情報(頭頂葉「空間認識野」という空間処理などをおこなう部分。図➎周辺)や、目からの視覚情報(後頭葉「視覚野」という視覚情報を分析する部分から送られる。図➑)などを、付加しながら、微妙な動作プログラムの修正を行って(小脳;首の上辺りにあります。図➑の下)、身体の筋肉を動かす部位(頭頂葉「運動野」:図➍)に送られ、神経で筋肉に指令が行きます。
今回の焦点は、上記の前頭葉から、脳の中心部に情報を送る際に使う神経ネットワーク(「線条体」などといいます。図➌の近く)部分にあります。
ここは、別称「報酬系神経群」とも呼ばれ、自分に達成感や充実感をもたらすと前頭葉が判断した情報には、活性化するという特性があります。
但し、達成感(やったー!)が、見込まれそうなものについては、活性化しますが、達成できたときや、明らかに達成できると、脳が判断すると、急にこの「報酬神経群」の血流が落ち、パフォーマンスが落ちてしまいます。
今回の例で言うと、チャンス球が来た時に、「やったー!もらった!」や「絶対に決めれる球だ!決めるぞ!」と思うことで、脳が「明らかに達成できる事象」と判断して、「報酬神経群」の血流が落ち、パフォーマンスが低下、筋肉などへの指令の質も低下したと考えられます。
具体的な現象としては、右肘が前に出すぎて、ラケット面が下に向いてしまった。上半身が、前に突っ込むように傾斜したまま、スイング回転運動をしてしまい、同じく、ラケット面が下に向いてしまった。などが考えられます。
◯それでは、どうすれば、良いのでしょうか?
今回の事例は、脳が、「明らかな達成できる事象」と判断しててしまったため、このようなミスが発生した、と考えると、逆に、「もう少しで達成できそうだ!」という、達成感が見込まれる(報酬(達成感)が見込まれると活性化するので、「報酬神経群」)状態を作り出せば、ミスが発生しにくいということになります。
具体的には、決めのスマッシュを打つ時に、その後、もう一発プッシュをネット前で跳びついて打つつもりで、打ちにいくことが考えられます。そうすれば、報酬神経群が、「達成を見込める状態」と判断するので、パフォーマンスが低下せず、寧ろ、向上して、ミスが減少すると考えます。
また、身体のバランス的にも、スマッシュ&プッシュと考えれば、プッシュで跳びつけばよいので、スマッシュで上半身を無理に前に突っ込みすぎる、ということも減少すると考えます。
如何でしょうか?
自分は、本番に弱い、メンタルが弱いと、決めつけてしまう前に、誰にでも起きうる脳の習性ということで、上記を試してみませんか?
次回は、「イースタングリップにすると、オーバーヘッドでシャトルが左に切れてしまう。」です。
今回も、最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点、ご理解の上で、お読み、お試しくだされば、ありがたいです。