チャンス球は、なぜ引っかけやすいの?

こんにちは、樋口です。
ダブルスで、そのプレーヤーは、強烈なスマッシュ、相手はレシーブで当たり損ね、そして、甘い球がハーフ(コート縦の半分位の位置)より若干前に、フラフラと上がりました。

まさに、チャンス到来!もらった!そのまま、前に突っ込んでもう一発決めのスマッシュ!!と、シャトルは、ネットに突き刺さってしまいました。
 
 
本人は、絶対決まると思っていた分、ガックリと、大きなメンタル的ダメージを受けます。逆に相手は、絶対絶命と感じていただけに、大喜び、モチベーションが向上します。
しかも、一回それをやると、同じような状況で、何回もミスを繰り返してしまいます。
 
 
このような経験は、一度は記憶にあるのではないでしょうか?
 
 
   チャンス球は、なぜ引っかけやすいの?
 
 
 

◯さて、なぜこのようなことが、起きてしまうのでしょうか?

果たして、チャンス球をミスしてしまうプレーヤーは、メンタルが弱いのでしょうか?
今回は、最近、進歩著しい脳科学的な視点から考察してみます。
 
 
人間の脳は、先ず、外部から入ってきた情報 (今回なら、「チャンス球が来た!」という情報)を、自分にとって、利用価値があるか、否かを、前頭葉(目の上辺りから、頭の前部分の位置。図❶)という部分で、判断します。
 
   脳番地「脳の学校」代表・加藤俊徳氏作製資料
 
 
そして、価値のある情報だと判断すると、脳の中枢部に神経ネットワークを使って、情報を送り、過去の記憶(以前、チャンス球をスマッシュで決めた、類似ケース)を検索し(側頭葉「海馬」という、記憶を管理する部分(耳上の奥あたりにある。図❾)が、おこなう)、参照しながら、処理方法を決定します。
 
 
その情報は、3D空間のどこにシャトルがあるか、どこに移動するかなどのナビゲーション情報(頭頂葉「空間認識野」という空間処理などをおこなう部分。図➎周辺)や、目からの視覚情報(後頭葉「視覚野」という視覚情報を分析する部分から送られる。図➑)などを、付加しながら、微妙な動作プログラムの修正を行って(小脳;首の上辺りにあります。図➑の下)、身体の筋肉を動かす部位(頭頂葉「運動野」:図➍)に送られ、神経で筋肉に指令が行きます。
 
 
今回の焦点は、上記の前頭葉から、脳の中心部に情報を送る際に使う神経ネットワーク(「線条体」などといいます。図➌の近く)部分にあります。
 
 
   脳神経細胞
 
 
ここは、別称「報酬系神経群」とも呼ばれ、自分に達成感や充実感をもたらすと前頭葉が判断した情報には、活性化するという特性があります。
 
 
但し、達成感(やったー!)が、見込まれそうなものについては、活性化しますが、達成できたときや、明らかに達成できると、脳が判断すると、急にこの「報酬神経群」の血流が落ち、パフォーマンスが落ちてしまいます。
 
 
今回の例で言うと、チャンス球が来た時に、「やったー!もらった!」や「絶対に決めれる球だ!決めるぞ!」と思うことで、脳が「明らかに達成できる事象」と判断して、「報酬神経群」の血流が落ち、パフォーマンスが低下、筋肉などへの指令の質も低下したと考えられます。
 
 
具体的な現象としては、右肘が前に出すぎて、ラケット面が下に向いてしまった。上半身が、前に突っ込むように傾斜したまま、スイング回転運動をしてしまい、同じく、ラケット面が下に向いてしまった。などが考えられます。
 
 
 

◯それでは、どうすれば、良いのでしょうか?

今回の事例は、脳が、「明らかな達成できる事象」と判断しててしまったため、このようなミスが発生した、と考えると、逆に、「もう少しで達成できそうだ!」という、達成感が見込まれる(報酬(達成感)が見込まれると活性化するので、「報酬神経群」)状態を作り出せば、ミスが発生しにくいということになります。
 
 
具体的には、決めのスマッシュを打つ時に、その後、もう一発プッシュをネット前で跳びついて打つつもりで、打ちにいくことが考えられます。そうすれば、報酬神経群が、「達成を見込める状態」と判断するので、パフォーマンスが低下せず、寧ろ、向上して、ミスが減少すると考えます。
 
 
また、身体のバランス的にも、スマッシュ&プッシュと考えれば、プッシュで跳びつけばよいので、スマッシュで上半身を無理に前に突っ込みすぎる、ということも減少すると考えます。
 
 
如何でしょうか?
自分は、本番に弱い、メンタルが弱いと、決めつけてしまう前に、誰にでも起きうる脳の習性ということで、上記を試してみませんか?
 
   頭部
 
 
次回は、「イースタングリップにすると、オーバーヘッドでシャトルが左に切れてしまう。」です。
 
 
今回も、最後までご覧いただき、ありがとうございました。
 
 
※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点、ご理解の上で、お読み、お試しくだされば、ありがたいです。
 
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樋口 孝雄バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)

投稿者プロフィール

バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)
1966年2月4日生
東京都国分寺市在住
実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ

競技歴:1982~2001年
指導歴:2002年~

私のバドミントン生活は高校から始まりました。運動系全般が苦手な私でしたが、何かスポーツをやりたくてバドミントン部を選びました。
当時、技術指導者はいませんでしたので、仲間よりワンテンポ遅れてしまう自分が、どうしたら理論的に技術が身につくかを、常に考えるようになっていました。この頃の背景がベースになり、今の私の技術指導スタイルが確立されたといえます。

元来、教えることが好きなこともあり、十数年前に小学生の指導を始めました。時間が許す限り、バドミントンのみならず、他競技のDVDや書籍etc.情報を集めては分析・検証し、よりシンプルでわかりやすいスキルアップ方法とは何か、知識と経験を積み上げてきました。現在は、技術指導者のいない中学生を中心に、学齢前から成人までのサポート活動をしております。

同じ指導でも、すぐ体現できる人もいれば、時間のかかる人もいます。指導する側にも、個性を生かした工夫が求められていると、身につくまでの道のりが遠かった私自身の体験から、感じています。

これまでの蓄積と、今後のさらなる追求を少しでも共有でき、特にお悩みを抱えている方々の微力ながら、お役に立つことができれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

競技歴詳細:

東京都立小平西高→法政大学バドミントン同好会72

主催指導活動:

「癖動作矯正指導法」研究及びレッスン
→(http://minton.blog.jp/archives/306166.html)
西国分寺バドレッスン for 中高生 代表者
→ (https://minton.jp/Group/detail/158)
バドミントンNPO団体 東村山フリューゲルス代表者

外部指導活動(東京都内):

実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ
堀越高等学校 男子バドミントン部
練馬区立中村中学校
東久留米市立中央中学校
他中高計8校、一般3団体

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