オーバーヘッドでなぜ、振り回してしまうの?

こんにちは、樋口です。

そのプレーヤーは、とにかくスマッシュを速くしたい、追い込まれても、シャトルを大きく後ろまで返したいとの一念で、もの凄く速くラケットをスイングします。本当に見た目、腕が飛んで行ってしまうのではないかと思うくらいに、全力で肩を回しています。

 

ところが、肩や腕を振り回せば、振り回すほどに、当たり損ねなどのミスが出たり、本人が満足するほどのスピードが出ません。肩には力が込められて、いわゆる、力みが発生しています。
かといって、力みをなくして、リラックスしてスイングしても、力を抜いただけの速さしか出ません。本人はちょっとがっかりしています。周囲の人たちは、肩を故障するのではないかと、気が気でありません。

 

◯どうして彼は、一生懸命スイングしているのに、速いスマッシュが打てないのでしょうか?原因は何でしょうか?

先ず、彼がスイングに利用している筋肉を考えてみます。
彼は、腕が飛んでいくのではないかと思うほど、振っていますので、腕とそれがくっついている肩が使われています。彼だけでなく、一般的なイメージとしても、ラケットを持っていますから、肩や腕を速く振るというのは、至極、理にかなっている考え方です。

 

しかし、ここで考えたいのは、腕や肩の筋肉の大きさです。身体全体で考えてみると、決して大きな筋肉たちではありません。
腕は二の腕(上腕)の内側の力こぶ(上腕二頭筋)はちょっとは厚みがありますが、皆が皆、丸太の様には太くないですし、肩周りの筋肉も、上腕を肩(肩甲骨)に繋ぎ止めておく小さめな筋肉ばかりです(インナーマッスル)。
    ロテーターカフ
もし、肩周りがもっと大きな筋肉群であれば、速く振れば、物理的に速いストロークが打てると考えます。

〇では、大きい筋肉群はどこにあるのでしょうか?

身体全体を見渡すとそれらは、下半身にあります。ちょうど腰やお尻周りです。その部分には、骨盤という骨があって、腹部(腹直筋(シックスパック)、腹斜筋(脇腹)など)、お尻(大臀筋など)、太もも(大腿四頭筋(前)、ハムストリングス(後ろ)など)、背中(広背筋など)、上下半身を繋ぐ(腸腰筋)筋肉などの、大きくハイパワーな筋肉の端っこが付着しています。
     骨盤筋肉イラスト
骨盤は、下半身の大きな筋肉の中継点のような役割を果たしている、重要な骨なのです。飛行場で例えれば、主要な航空路線が集中する「ハブ空港」のような感じです。
これらの大きく、ハイパワーな筋肉たちを上手く動員できれば、力強いショットが打てると考えます。

◯それでは、骨盤周りの大きな筋肉群を、どのようにすれば使えるでしょうか?

大きな筋肉たちは、骨盤の上下左右、前面、後面とあらゆる方向に付着しています。そこで、いくつかの筋肉(臀部の大臀筋、太もも裏の筋肉(ハムストリングス)、骨盤経由で、腰骨(腰椎)と大腿骨を繋いでいる筋肉(腸腰筋)など)を動員しやすい姿勢をとります。
それが、「スクワット」です。スクワットには、2種類あって、膝を前に出す方法と、膝は出さずに、お尻を後ろに出しながら下げる(椅子に座る動作)があります。使うのは、後者の方です。

 

(手順)

  スクワット1       スクワット2
↑①スクワットをする(股関節を曲げる)
ハート形の器のような形状の骨盤の上部が、お辞儀するように、前に傾斜します(骨盤前傾)。そうすると、上記の大臀筋等の筋肉がやや伸ばされ、力が蓄積されます。

 

  スクワット3
↑ ②お尻を右足の真上に移動する(重心移動)
オーバーヘッドを打つ時には、右足から左足に体重移動をしますが、その準備動作です。

 

  スクワット4
↑ ③右脚を軸にして右腰から上半身を右方向に捻る
脇腹(複斜筋等)や背中(広背筋等)も引き伸ばされるので、その筋肉群のパワーも利用できます。

 

  スクワット5    テイクバック
↑ ④左腕を前方(左脚方向)に伸ばし、顔も前方を向ける 。右腕はテイクバック
シャトルが来るネット方向は、左方向に想定します。左腕を伸ばして前に伸ばすと、胸の大きな筋肉(大胸筋左部分)が、ピンと張り、パワーを引き出せます。
顔は、左肩越しに、シャトルを狙うように見ます(エイミング動作)。

 

この時に、肺にやや多めに空気を吸い込み、そのまま、軽くお腹をへこまします(ドローインと言います)。そうすると、腹圧が高まるため、胴(体幹)がやや固まり、上半身の姿勢維持が楽になります。また、体幹がやや固まる分、動きが止まりやすくなるため、そこで所謂、「タメ」ができ、パワーが蓄積されます。あとは、息を吐きながら、スイングするだけです。

 

  スクワット6
↑ ⑤そこから、右脚を蹴るように一気に、左脚(軸足)に体重移動し、身体が伸びます。すると、
スクワット状態が解除されるので、大きな筋肉群が、ゴムが縮むように一気に収縮します。その時に、大きなエネルギーが発生します(短縮性収縮、伸張反射)。

 

動画(画像をクリックしてください↓)
Youtube動画

 

こんな感じになります。骨盤周りの強力な筋肉から、パワーが供給できるようになると、肩や腕をブン回すような、余分な動作や力みが改善すると考えます。

 

↓  以下は、上記テイクバック方式に近いテイクバックをする、アスリートの見本写真です。
   見本(オーバーヘッド)1       見本(オーバーヘッド)2

 

↓ 以下は、同じ技術を用いていると思われる、別競技のテイクバック例です。
見本(オーバーヘッド)4      見本(オーバーヘッド)3

 

一度、お試しください。

 

次回は、「チャンス球は、なぜ引っかけやすい?」です。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点、ご理解の上で、お読み、お試しくだされば、ありがたいです。
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樋口 孝雄バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)

投稿者プロフィール

バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)
1966年2月4日生
東京都国分寺市在住
実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ

競技歴:1982~2001年
指導歴:2002年~

私のバドミントン生活は高校から始まりました。運動系全般が苦手な私でしたが、何かスポーツをやりたくてバドミントン部を選びました。
当時、技術指導者はいませんでしたので、仲間よりワンテンポ遅れてしまう自分が、どうしたら理論的に技術が身につくかを、常に考えるようになっていました。この頃の背景がベースになり、今の私の技術指導スタイルが確立されたといえます。

元来、教えることが好きなこともあり、十数年前に小学生の指導を始めました。時間が許す限り、バドミントンのみならず、他競技のDVDや書籍etc.情報を集めては分析・検証し、よりシンプルでわかりやすいスキルアップ方法とは何か、知識と経験を積み上げてきました。現在は、技術指導者のいない中学生を中心に、学齢前から成人までのサポート活動をしております。

同じ指導でも、すぐ体現できる人もいれば、時間のかかる人もいます。指導する側にも、個性を生かした工夫が求められていると、身につくまでの道のりが遠かった私自身の体験から、感じています。

これまでの蓄積と、今後のさらなる追求を少しでも共有でき、特にお悩みを抱えている方々の微力ながら、お役に立つことができれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

競技歴詳細:

東京都立小平西高→法政大学バドミントン同好会72

主催指導活動:

「癖動作矯正指導法」研究及びレッスン
→(http://minton.blog.jp/archives/306166.html)
西国分寺バドレッスン for 中高生 代表者
→ (https://minton.jp/Group/detail/158)
バドミントンNPO団体 東村山フリューゲルス代表者

外部指導活動(東京都内):

実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ
堀越高等学校 男子バドミントン部
練馬区立中村中学校
東久留米市立中央中学校
他中高計8校、一般3団体

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