こんにちは。
前回まではアミノ酸、特にBCAAを中心にして、アミノ酸がどのように代謝され利用されていくのかを概説してきました。基本的にはタンパク質源でもあるし、状況に応じてエネルギーの元にもなれるという話でした。
しかし実際の食生活では、タンパク質(アミノ酸)のみを摂取することはなく、同時に炭水化物(こちらの方がエネルギー源になりやすい)や脂質を摂取していることがほとんどです。そこで今回からしばらくは、『タンパク質代謝とエネルギー代謝の相互作用』をキーワードに話を展開していこうと思います。
<P:E比という概念>
食事中のタンパク質(Protein)とエネルギー(Energy)の比をP:E比と呼びます。この連載の序盤でご紹介したアミノ酸スコアと同様に、食品の質を評価する1つの項目であると考えて頂ければ良いと思います。発展途上国での低栄養や先進国での食事性肥満など、様々な場面でP:E比は問題となってきます。
<P:Eが崩れるとどうなるのか?>
身体にとって一番重要なのはエネルギーなので、P>>Eのような状態になると、タンパク質はエネルギー代謝に利用されます。TCA回路に入るわけですね。従ってエネルギーの量によってタンパク質の利用方法はその都度変わると言えます。
逆にエネルギーは十分にある状態で、タンパク質の量を変えるとどうなるのでしょうか。同一エネルギーを摂取しても、タンパク質摂取量が足りないと、成長遅延が起こります(成長期のヒトや実験動物で観察される傾向です)。身体を作る素材そのものがないからですね。
他にもタンパク質摂取量がエネルギー代謝に影響する例として、DIT(Diet-induced thermogenesis; 食餌性熱産生)があります。タンパク質を代謝するためにはエネルギーが必要であり、こうしてエネルギーを利用すると熱が発生します。従って、食事中でP>Eだと食後の熱産生、体温上昇が向上します。DITはいわゆる基礎代謝と呼ばれるものです。
次回からは実際の食品中のP:E比を見てながら、バランスのとれた食事の考察を深めたいと思います。