第16回:初心者の特徴を知る(授業教材3)

 

授業教材シリーズ第3回は、「初心者特有のフォーム」について考えてみます。

バドミントンの授業を受講する学生のほとんどが、バドミントンの初心者です。私は、正しいストローク(技術)を教えるよりも先に、「なぜ自分は初心者特有のフォームになってしまうのか?」を理解させることが、初心者を脱却する近道になると考えています。

今回は、アンダーハンド・ストロークを扱います。初心者は、下の写真のように前腕とラケットを一直線にしてシャトルにアプローチし、腕全体を上下に動かしてシャトルを打とうとします。なぜ、このようなフォームに陥るのか?その原因は2つあると、私は考えています。

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原因1:空振りに対する不安
「空振りしたくない」と思うのは、初心者が抱く当然の心理でしょう。初心者は、前腕とラケットを一直線にすることで、ラケットにシャトルが当たる確率を高めようとします。つまり、前腕とラケットを一直線にすることは、初心者が初心者なりに工夫した結果だと言えます。いくら初心者だからといって、初心者になりたくてなっている訳ではないですからね。

原因2:手首を使って打つという誤解
私がサービスを打つところを学生に観察させ、「身体のどこを使っているか?」を聞くと、ほとんどの学生は「手首を使って打っている」と答えます。そこで次に、「では、手首を動かしてみて」と言うと、ほぼ全ての学生はいわゆるスナップ動作(手首の屈曲・伸展)をします。中には、準備体操で行うように手首をぐるぐると回す学生もいます。

ここに、初心者特有のフォームに陥る2つ目の原因があります。

そもそも、前腕の回内・回外という動作は見えにくいため、初心者はその動きに気付きません。そこで、「手首を使って打っているはずだ」と、思い込みます。そして、手首の動きといえばスナップ動作(屈曲・伸展)をイメージするため、手首のスナップ動作を使ってラケットを動かします。ところが、それだけでは大きな力がでない(シャトルが飛ばない)ため、腕全体を上下に動かすことで、より大きな力を出そうとします。

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1) 「空振りしたくない!」 → 前腕とラケットを一直線に
2) 「手首を使っているはずだ!」 → スナップ動作でヒッティング
3) 「あれ、あまりシャトルが飛ばないぞ?」 → 腕全体を上下に

これで、初心者特有のアンダーハンド・ストロークの出来上がりです(笑)

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この初心者の特徴を理解した上で、アンダーハンド・ストロークを教えていきます。

前腕とラケットを一直線にしてシャトルにアプローチすると、回内・回外では力は生まれません(力のモーメントがゼロ)。回内・回外でラケットを動かしシャトルに力を伝えるためには、必ず前腕とラケットで角度(Vマークと呼んでます)を作ることが必要になります。

そこで私は、「回内・回外で打ちなさい」ということよりも、「前腕とラケットで必ずVマークを作りなさい」ということを大切にして指導します。これが、初心者脱却の第一歩になります。授業では学生に下の資料を配り、トッププレーヤーが前腕とラケットでしっかりVマークを作っていることをイメージで理解できるように促します。

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これは個人的な経験ですが、回内・回外を強く意識した指導をすると、「回内・回外だけしか使ってはいけない!」と誤解してしまうのか、かえってストロークが不自然になる学生がでてきます(特に、まじめな学生に多い)。Vマークさえしっかりと作れていれば、学生は無意識のうちに、回内・回外を適度に使った自然なストロークを習得していくように感じます。ですので、授業では「回内・回外だけでシャトルを打つ」という練習はしていません。

指導していると、技術を伝える際の表現は本当に難しいと痛感しています。抑えるべきポイントは、もちろん説明しなくてはいけません。一方で、無意識に習得した場合の方が、より合理的(自然)な動作になることもあるように思います。教員(もしくは指導者)が学生(もしくは選手)の成長を妨げることがないように、「説明するけど強調しない」というスタンスも技術指導の場合は大切になるのでは、と考えています。

みなさんは、いかがお考えですか?普段、技術指導の際に使っている表現を、改めて考え直してみてはいかがでしょうか。

西島 壮(首都大学東京)

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西島壮(にしじま たけし)バドミトンの新たな魅力について研究しています

投稿者プロフィール

生年月日:1978年7月23日
身長/体重:175 cm/63 kg
血液型:B型
出身地:長野県

略歴:
1997 長野県松本深志高校 卒業
2001 筑波大学 体育専門学群 卒業
2006 筑波大学大学院 人間健康科学研究科 体育科学専攻 修了
    博士(体育科学)取得
2006 筑波大学大学院 研究員(COE)
2007 財団法人国際科学振興財団 専任研究員
2007 カハール研究所(スペイン) 外国人若手研究員
2009 首都大学東京 助教

競技歴:
1999 全日本学生バドミントン選手権大会 ダブルス(2回戦)
2012 全日本教職員バドミントン選手権大会 30代ダブルス準優勝

専門分野:
運動生理学、運動神経科学

研究室ホームページ:
www.comp.tmu.ac.jp/behav-neurosci/

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