こんにちは、西島です。
先週3月11日で、東日本大震災が発生してから4年となりました。現在でも被災地では多くの方々が日々の生活に苦労されている中ですが、今回は、運動・スポーツによる被災地支援について考えてみたいと思います。
震災後、バドミントンの元日本代表・米倉加奈子さんを中心に「米倉加奈子プロジェクト」が立ち上がり、バドミントンを通じた被災地支援が行われました。そのなかで、全国のバドミントンプレーヤーから寄贈された約1200本ものラケットが被災地に届けられたそうです。米倉さん以外にも、陸上の為末大さんやサッカーの小笠原満男選手など、多くのトップアスリートが被災地支援を行っています。また日本体育協会などが中心になり、被災地の子どもたちに笑顔を届けるための「スポーツこころのプロジェクト」が行われています。
このような運動・スポーツによる被災地支援は、多くの方々が賛同されることでしょう。でも一方で、「運動・スポーツなんかしている場合じゃない」と思われる方も多いのではないでしょうか。特に震災直後の混乱した状況下では、それも仕方が無いことだと思います。実際、米倉さんもプロジェクト立ち上げのメッセージに、「今回の震災に心を痛め、何ができるの?と、考えた方が大勢いらっしゃると思います。しかし、スポーツは二の次。これが今の現状であり、当たり前。」と、その気持ちを書かれていました。では、このような「運動・スポーツによる被災地支援が大切なのは分かるが、理解は得られにくい」という現状は、どのようにしたら打ち破ることができるでしょうか?
さて、皆さんは生活不活発病という言葉を聞いたことがありますか?
日本障害者リハビリテーション協会のホームページでは、「まさにその文字が示すように、「”生活”が”不活発”」になることで全身の機能が低下する病気」と説明があります。主な症状としては、心肺機能や筋力の低下など身体に生じるものに加えて、うつ状態など精神的な影響が生じるといったように、生体のあらゆる機能が低下することがその特徴に挙げられています。そしてこの生活不活発病は、災害後に特に注意が必要になります。
避難所で生活する高齢者を想像してください。
狭い避難所生活では、周りの人に遠慮して「動かない」ことを選んでしまいます。そのような生活を続けていくうちに、「動きにくく」なり、最終的に「動けなく」なってしまう。動けなくなった結果、生活不活発病におちいり、生体の機能が低下してゆく。したがって生活不活発病を予防するためには、「動かない」→「動きにくい」→「動けない」という負の連鎖を止めることが、避難所生活者(特に高齢者)では重要になります。
前回の投稿では、「動かないこと(身体不活動)は、喫煙と同じくらい体(社会)に悪影響を与える」ということを紹介させていただきました。また、身体不活動は、うつ病発症の危険因子にもなることが、これまでの研究で明らかにされています。このように、身体不活動(不活発な生活)は、間違いなく心身の健康を害する危険因子になります。しかしながら、「タバコ」や「過食」などの他の危険因子と比べると、あまり認知されていないのが現状だと思います。
「運動・スポーツによる被災地支援が大切なのは分かるが、理解は得られにくい。」
このような状況を打破するために、「運動・スポーツは体に良い」ではなく、「そもそも動かないことは体に悪い」という共通認識を持つことが、私は大切だと感じています。このような共通認識があれば、米倉さんら一流アスリートの勇気に頼るだけではなく、運動・スポーツによる被災地支援ももっと活動しやすくなるのではないでしょうか。
次の自然災害がいつ起こるかは誰にも予想することはできませんが、その時までに少しでも、「そもそも動かないことは体に悪い」という考えが浸透していれば良いなと願っています。私は、震災後に被災地を訪れたことも、被災地支援に積極的に参加したわけでもありません。偉そうなことを言える立場ではありませんが、身体不活動の健康影響をしっかりと伝えていくこと、これが私にできることかと思い、震災後4年というこのタイミングでこの記事を投稿させていただきました。
震災で亡くなられた多くの方々のご冥福をお祈りいたします。
西島 壮(首都大学東京)
・月曜更新の予定が、遅くなってしまいました。
・画像は米倉加奈子プロジェクトを支えたラケットショップ・フジさんのHPから拝借させていただきました。