第9回:大学教員からみたバドミントン(2)

 

こんにちは、西島です。

さて、先週に引き続き「大学教員からみたバドミントン」をテーマに、今回は「授業教材としてのバドミントンの魅力」について話をさせていただきます。

体育の授業は当然のことながら、バドミントンの技術であったりルールであったりと、「バドミントンを教える」ことを中心に進んでいきます。基本的な技術を習得しなければ、やはりバドミントンを楽しむことはできません。1回90分(準備や片付けの時間を除くと、実際には60分弱)という限られた授業時間の中で、一度に30~40人の学生を相手にどうやったら効率よくバドミントンの技術を教えられるのか、教員の腕の見せ所です。

しかし、大学の授業でバドミントンだけを教えるのであれば、教員の力量不足と思われて仕方ありません。もっと大切なのは、「バドミントンで教える」ということだと考えています。では、バドミントンで一体何を教えられるのか。

そこで、私が「バドミントンで教えたい」と思っていることを、紹介させていただきます。紹介する内容はどれも、バドミントンに限らず他のスポーツ種目でも学べることだと思うのですが、バドミントンはこれらを学ぶための絶好の授業教材だと思っています。なかなか、こういうスポーツ種目も珍しいのではないのでしょうか。

1.やっつける!

テニスに比べるとバドミントンはラリーを続けるのも簡単なので、「ラリーを何回続けられるか」という課題を与えれば、第1回目の授業から50回続いた、100回続いたと、学生は大いに盛り上がります。しかし、この課題だけでは、残念ながら学生はすぐに飽きます。絶対に30分は持ちません。そこで次の段階として、「やっつける!」ということを課題にします。すると学生達の取り組み方は、羽打ち遊びからバドミントンへと一気に変わります。遊びからスポーツに変わる瞬間です。こうなれば、彼らは飽きることなく、へとへとになるまでシャトルを打ち続けます。

中にはスポーツで遊ぶ(楽しむ)ことが苦手な学生もいて、「やっつけてはいけない」と思っていたりします。また、選択授業の場合は学年・学部が異なる学生が履修するため、「相手に嫌な思いをさせたくない」と遠慮してしまう学生がほとんどです。このような状況では、バドミントン(スポーツ)で遊ぶことはできません。

そこで、このような余計な遠慮や気遣いを取り去って、学生が参加しやすい雰囲気を作るために、「スポーツなんだから、やっつけあってもいいんだよ。」ということを、明確に、繰り返し伝えることを、私は大切にしています。その言葉で、はっと気付く学生は大勢います。

もちろん、やり過ぎる学生もでてきます(笑)。バドミントン経験者が本気で打てば、ラリーは全く続きません。バドミントンの恐ろしいところです。しかも、授業では初心者から経験者、そして男女も関係なく一緒に行うため、その対戦相手が初心者の女性であれば、気持ちが引いていくのが良く分かります。でも、そんなやりすぎる学生も、自然とそういう状況には気が付くようで、次第によいバランスでプレーするようになっていきます。(中には、全く気付かず突っ走る学生もいますが、そんな学生には裏でこっそりダメ出しします。)

2.やっつけられて、楽しい!

この感覚も、スポーツで楽しむことが苦手な学生にとっては、あまり経験がないのかもしれません。そこで、「うぁ~、やられたぁ~、でいいじゃん。それを楽しもうよ。」と、言葉に出して伝えると、学生の取り組み方が変わってくるように感じています。

「やられた。そんなスマッシュ、返せるわけない。楽しくない。」ではなく、「うぁ~、やられたぁ~。スマッシュ早っ!返してみたい!!」となれば、準備OKですね。バドミントンだけでなく、全てのスポーツを楽しむために大切な心構えを身につけることができた、と言えるのではないでしょうか。

私は授業でテニスを担当することもあるのですが、授業レベルだとラリーを続けることが難しく、ほとんどがエラーで得点が動きます。「やっつけた」、「やっつけられた」という場面を見ることはあまりありません。一方、バドミントンは、授業の早い段階からその体験を提供することができるので、「バドミントンって、良い授業教材だなぁ~」と、つくづく思います。

以前、「運動会の徒競走で順位をつけない」ということが話題になったことがありましたね。最近はどうなっているか把握していないのですが、私は反対です。体育・スポーツから競技性を完全に奪ってしまったら、「ラリーを続けるだけのバドミントンが楽しくない」ように、すぐに飽きてしまいます。スポーツの本質を経験できずに、終わってしまいます。もちろん、負けて悔しい思いをする子が出ることになりますが、それをフォローするのが教員や親の役割なのではないでしょうか。教員や親がその大切な役割を放棄し、挙げ句にそのような状況を作り出さないための策を講じることは、私は共感できません。

ちょっと熱くなってしまいましたが、「バドミントンで何を教えられるのか」ということでしたね。そしてここまで書いて分かりましたが、1回では書ききれません!次回に続きます!

西島 壮

p.s. またまた写真は内容と全く関係ありません。私が勤める首都大学東京の川淵三郎理事長に、息子をだっこしてもらった写真です。親バカです。

 

 

 

 

 

 

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西島壮(にしじま たけし)バドミトンの新たな魅力について研究しています

投稿者プロフィール

生年月日:1978年7月23日
身長/体重:175 cm/63 kg
血液型:B型
出身地:長野県

略歴:
1997 長野県松本深志高校 卒業
2001 筑波大学 体育専門学群 卒業
2006 筑波大学大学院 人間健康科学研究科 体育科学専攻 修了
    博士(体育科学)取得
2006 筑波大学大学院 研究員(COE)
2007 財団法人国際科学振興財団 専任研究員
2007 カハール研究所(スペイン) 外国人若手研究員
2009 首都大学東京 助教

競技歴:
1999 全日本学生バドミントン選手権大会 ダブルス(2回戦)
2012 全日本教職員バドミントン選手権大会 30代ダブルス準優勝

専門分野:
運動生理学、運動神経科学

研究室ホームページ:
www.comp.tmu.ac.jp/behav-neurosci/

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