女子プレーヤーのジャンピングスマッシュ技術の練習への導入はどうなのか?(身体ケア視点編)

こんにちは。樋口です。

今回は、女子選手のジャンピングスマッシュ技術を練習に導入するメリット・デメリットについて、身体ケアの視点で考えてみたく、日本コンディショニング協会認定プロフェッショナルコンディショニングトレーナーの杉山市朗氏に話を伺ってきました。

今回も最後までお付き合いのほど、宜しくお願い致します。

 

***************

樋口:最近の女子選手は男子顔負けのジャンピングスマッシュを決めており、これからの時代は女子選手もジャンピングスマッシュを打てた方が有利だと考えて練習メニューに組み込む指導者や選手が増えてくると思います。
トレーナーの視点で考えるとどう思われますか?

杉山さん2杉山:私も実際に映像で見た事がありますが、凄いジャンピングスマッシュでビックリしました!確かに日本代表クラスの選手ならフィジカル面がしっかりしているので高い打点で打てるなどメリットが大きと思いますが、女子選手がジャンピングスマッシュを打つのはデメリットもある事をしっかり把握し指導していく必要があると思います。

樋口:具体的なデメリットを教えて頂けますでしょうか?

杉山さん2杉山一言で言うと怪我のリスクが大きいという事です。もう少し具体的に言うと膝に大きな負担がかかる可能性が高いのです。

樋口:指導する側としてはなぜ怪我のリスクが高まるのかを知っておく必要がありますね。

杉山さん2杉山:そうですね。特に未来あるジュニア期や中学生、高校生を指導されている方には理解しておいてほしいと思います。

樋口:では、膝に負担のかかるメカニズムを伺ってもよろしいでしょうか?

杉山さん2杉山:はい、少し長くなりますが。笑

ジャンピングスマッシュに限らず膝を怪我してしまう選手は少なからずいると思いますが、実は膝そのものに原因があって怪我をする事はほとんどなく、股関節や足関節の使い方が悪く結果的に膝を怪我してしまうのです。膝は被害者で犯人は股関節や足関節と考えるとわかりやすいと思います。

特に女性は男性に比べて骨盤が幅広の構造をしており、中殿筋(お尻の外側)がしっかり機能しないと膝を曲げた際につま先の向いている方向より膝が内側に入る(ニーイン)してしまいます。※膝は基本的に曲げ伸ばししかできない関節ですが膝が少しでも曲がった瞬間から僅かに捻じれる機能があります。
『ニーイン』=『膝の捻じれ』で膝は捻じれのストレスには弱い為、ニーインの癖がある状態でジャンプを繰り返せば必然的に膝に負担がかかってしまうのです。

樋口:なるほど~ジャンピングスマッシュを打たなくてもサイドに飛びつく、前への入りでもニーインの癖は改善しておきたいポイントですね。

杉山さん2杉山:そうですね。

樋口:では、具体的な改善エクササイズをご紹介頂けますか?

杉山さん2杉山:もちろんです。

まずニーインの癖があるかチェックしてみましょう。拳1個分の隙間を開けて立ち、軽く膝の曲げ伸ばしを行いつま先と同じ方向に膝が曲がればOKです。この際つま先より内側に膝が向く方はニーインしている可能性が高いです。

①使い過ぎや使えていない事で失った筋肉の弾力を取り戻すリセットコンディショニングを行います。

股関節のリセット項目
※参考文献:有吉与志恵 コンディショニングスタートブック 学研プラス 2017年

②使えていない筋肉の再教育を行うアクティブコンディショニングを行います。ここまで行うことで根本改善に繋がります。


※参考文献:有吉与志恵 コンディショニングスタートブック 学研プラス 2017年

③セラバンドをお持ちであれば練習前のウォーミングアップとしてこちらの種目もおススメです。

股関節のウォーミングアップ

樋口:ありがとうございます。最後に素朴な質問なのですが、女子でもバレーの選手は小学生でもアタックの際ジャンプをしますよね?なぜバレー選手はジャンプできてバドミントン選手はジャンプしないのでしょうか?

杉山さん2杉山:いい質問ですね。まず、バレーのアッタカーは必ず助走をつけて両脚で踏み切りますので女子選手でも高いジャンプが可能です。

また、バレーの場合は味方のトスを打ちますのである程度一定のタイミングで打てますし、打ったあとすぐには相手から返球されませんので十分に体勢を立て直すことが可能です。

一方バドミントンの場合、助走をつけてジャンプすることがなく基本的にはその場やサイドに飛びつきながら打つ為高いジャンプをすることが困難です。

また、相手の打ったシャトルを打つわけですから必ずしもベストな体勢で打てませんし、打ったらすぐに返球が返ってきますので、次の準備も必要です。

また、バレーはチームスポーツでアタックを打つのは1人ではありませんし、試合中に交代もできます。長いラリーのあとに立ち上がれないぐらい体力を消耗することもありません。

それに比べバドミントンはシングルであれば全て1人でのプレーですし、長いラリーのあとは立ち上がれないぐない体力を消耗するのでジャンピングスマッシュのデメリットを上回るだけのフィジカルがある選手にしか打てないショットだと思います。

1発ジャンピングスマッシュを打つだけなら練習すれば打てるようになるでしょうが、それをしないのはデメリットを上回るメリットがないからではないでしょうか。

樋口:なるほど、競技性の違いがあるのですね。わかりやすい解説ありがとうございました。

最後に総括ということで、皆さんにお伝えしたいことがございましたら、お願いいたします。

杉山さん2杉山:相手とのコンタクトのないバドミントンでは慢性的な痛みが怪我の入口ですので、しっかりとコンディショニングを行えば怪我は予防できます。

土台となる機能的な身体でないままハードな練習をこなしていては、技術習得まで時間がかかったり、怪我のリスクが高まるだけです。

逆に怪我をしない身体作りはパフォーマンスアップに直結すると考えています。その為にはセルフケアは必須です。

今回の対談をきっかけに指導者の皆さんの考えるきっかけになれば嬉しく思います。

今回はありがとうございました。

樋口:ありがとうございました。

*****************

 

以上、今回ジャンピングスマッシュを通じて杉山氏と対談する中で、バドミントンの技術は、身体のコンディショニング(怪我防止)の観点からも考えながら取り入れていくことが、これからは大切ではないかと感じました。

バドミントン界でも、ジュニアクラブや私立での部活動でも、コンディショニングトレーナーや、アスレティックトレーナー(AT)制度が導入されているところが、少しずつですが増えてきました。

身体は、壊してから治す時代ではもうありません。

壊してしまうと、治療に外科、内科及び、投薬や手術をしない柔道整復師(接骨院)、日常生活ができるまでのリハビリテーションに理学療法士、作業療法士(メンタルも含める)、競技レベルまでの身体の回復をおこなうアスレティックトレーナー(AT)などと、怪我以前のパフォーマンスに戻す(競技復帰)までに莫大な時間がかかってしまいます。

また、再発のリスクも高まります。

ですので、どうやったら壊さないように(外傷、慢性障害)リスク管理をしていくかの時代に入っていると考えます。

私のような身体管理の素人には、まだ上記の資格の方たちは、怪我をした時に、神の手のように治してくれる的な存在、怪我と付き合いながらサポートしてくれる存在というイメージが強いです。

しかし怪我をしない、怪我を未然に防ぐのが最も上策な身体管理と考えます。

一律に(頭ごなしに)競技特性上の技術をやってはいけないではなく、身体管理の専門家からの知識を得た上で、怪我リスクを下げながら、慎重に競技を行なっていくことが求められているのではないでしょうか。

今回も最後まで、お読みいただきありがとうございました。

次回は、「新入部員を自立的に成長させる取組み」です。

 

【杉山市朗氏プロフィール】

杉山氏

大学在学中に母校のバドミントン部のコーチを3年間勤め、卒業後はフィットネスクラブのインストラクターとしてキャリアをスタートする。その後、2015年にフリーのコンディショニングトレーナーとして独立し、2017年から実践学園バドミントン部のフィジカルコーチとしても活動を開始。バドミントンのポータルサイト『minton』ではコンディショニング、トレーニング関連のブログを連載中。

オフィシャルウェブサイト ‭https://www.16sugiyama.com

minton ブログ ‭http://blog.minton.jp‬

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樋口 孝雄バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)

投稿者プロフィール

バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)
1966年2月4日生
東京都国分寺市在住
実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ

競技歴:1982~2001年
指導歴:2002年~

私のバドミントン生活は高校から始まりました。運動系全般が苦手な私でしたが、何かスポーツをやりたくてバドミントン部を選びました。
当時、技術指導者はいませんでしたので、仲間よりワンテンポ遅れてしまう自分が、どうしたら理論的に技術が身につくかを、常に考えるようになっていました。この頃の背景がベースになり、今の私の技術指導スタイルが確立されたといえます。

元来、教えることが好きなこともあり、十数年前に小学生の指導を始めました。時間が許す限り、バドミントンのみならず、他競技のDVDや書籍etc.情報を集めては分析・検証し、よりシンプルでわかりやすいスキルアップ方法とは何か、知識と経験を積み上げてきました。現在は、技術指導者のいない中学生を中心に、学齢前から成人までのサポート活動をしております。

同じ指導でも、すぐ体現できる人もいれば、時間のかかる人もいます。指導する側にも、個性を生かした工夫が求められていると、身につくまでの道のりが遠かった私自身の体験から、感じています。

これまでの蓄積と、今後のさらなる追求を少しでも共有でき、特にお悩みを抱えている方々の微力ながら、お役に立つことができれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

競技歴詳細:

東京都立小平西高→法政大学バドミントン同好会72

主催指導活動:

「癖動作矯正指導法」研究及びレッスン
→(http://minton.blog.jp/archives/306166.html)
西国分寺バドレッスン for 中高生 代表者
→ (https://minton.jp/Group/detail/158)
バドミントンNPO団体 東村山フリューゲルス代表者

外部指導活動(東京都内):

実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ
堀越高等学校 男子バドミントン部
練馬区立中村中学校
東久留米市立中央中学校
他中高計8校、一般3団体

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