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戦術の大切さ:初心者から戦術を駆使できる選手を育成する(戦術技術構築編)
- 2018/2/11
- バド♪Remaking, 日替バド定食
こんにちは。樋口です。
試合において、打つ手が無くなってしまって、スマッシュを打ち続けるしかない!なんて経験はありませんか?
そんな時、戦術的思考が大きな助けになってくれます。
今回は、戦術能力の構築について、優秀な指導者のかたの指導内容をご報告しながら、考察させて戴きます。
最後までお付き合いのほど、宜しくお願い致します。
(プロローグ)
過日、神奈川県横浜市泉区にある、泉が丘中学さんにお邪魔させて戴きました。
午前中は、顧問の高橋氏のご指導を拝見させて戴き、午後は私が技術講習をやらせて戴きました。
泉が丘中さんは、来たる3月の全中大会にも個人で1ペアが出場のほか、各種大会でも活躍されています。その指導にあたられている顧問の高橋氏は、前任校でも初心者の選手達を関東大会出場に導いた実績をお持ちです。
特筆すべきは、ほぼ初心者の生徒さんを短期間で急成長させる手腕です。その奥義を勉強させて戴くべくお邪魔させて戴きました。
(ステージ1)
【戦術が拡げる能力的伸び代(可塑性)】
個人的に見ていて感じたのは、選手自身が戦術を立案し、どんなタイプの相手が出て来ても柔軟に対応する発想力、自ら戦術をバージョンアップできる能力、将来の伸び代や可能性を拡げる能力が磨かれているなあと感じました。
それが結果に最短距離でつながっていると感じました。
中学は約2年ちょっとと短期間ですので、それを考え抜いた戦略だと考えます。
戦術は、大きく4種類に分けられると考えております。
①相手の苦手(短所)を攻める
②自分の得意(長所)で攻める
③相手の得意を認知して、それをさせないようにする
④相手に自分の狙い通りの球を打たせて、先回りして追い詰める
これらは、下に行くにつれて、難易度が上がります。
高橋氏のご指導では、上記④と最も難易度の高い戦術を用いて育成されていると感じました。
(ステージ2)
【具体的な指導手法(概要)】
これを初心者に教えて行くには、非常に高い指導能力が必要になります。当然、わかりやすくしなければ、理解どころか混乱を招いてしまうからです。
具体的に実践されていると考える特長的な取り組みは、以下の大きく5つです。
《戦術構築のための特長的な取り組み》
❶戦術技術を細かく分解、考察して段階別に区分し、技術レベルに応じて当てはめる。決して、そのレベル以上のことをやらせず、レベル上達を指導者が検証の上、少しずつ戦術技術をレベルアップしていく。
❷ノックやパターン練習などに当てはめて構築していく。ただし、必ずポイントを明確に平易に解説し、練習の狙いを意識させることに重点をおく。ノックやパターン練習自体は手段に過ぎない。
❸戦術に不可欠な配球(球回し)の前提として、ミスなしラリー練習をする(例:20球ミスをしないでオールショートを続ける)
❹戦術的な指導や解説をわかりやすい言葉で、頻繁に伝えていく。また、生徒に質問形式でアドバイスをして自ら考えさせる方式も多く採る。その際にはヒントを含んだ質問など、選手が考えつつも答えを出しやすいよう、導いている手法も駆使する。
❺上記❹を発展させて、選手が選手を教える、アドバイスをするという相互教授のやり方を構築、実践している。
(ステージ3)
【具体的な指導法(各論)】
《上記❶》
段階的に指導する方法で、例えば、オーバーヘッドスイングの形が不完全な初心者の選手に、すぐフットワーク付きの前後のノックを実施してしまうと、スイングがフォームはさらに崩れていってしまいます。
スイングフォームを構築している間は、脳が意識下で運動プログラムを構築しようと、フル回転していますので、それに動きの情報が加わると、脳が過負荷で一杯一杯になってしまいます。
(パソコンで重たい処理をしている時に、さらに他のインストールなどをすると過負荷で固まったり、処理スピードが落ちたりするのに似ています)
結局、段階を追って順次教えた方が、上達の効率は良いと考えます。
《上記❷》
ノックやパターン練習に具体的に落とし込んでいきます。
その際に、重要な取り組みとなるのが、平易なポイントの明示化と解説です。要は、ポイントをあげ、わかりやすく説明してから始めるということです。
そのポイント例が、下記のホワイトボードの写真です。
それに加えて、高橋氏が随時、個別にアドバイスしたりしながら、技術の補正を逐次行われています。
これにより、相手にこちらの思った球を打たせるような高い戦術能力が効率的に醸成されていくと考えます。
これは、アタックアンドレシーブ(攻撃対守備)練習(4人:全面)ですが、上記のポイントを意識して、選手達にはラリーを続けさせます。
ポイント内容から重要な点は、ドロップのような遅い球が来たら、白帯近くで触り、相手の時間を削った上で、サイドに振って更に時間を削り、相手が対応時間不足から打点が低いところから最短距離で打ってこざるを得ない状況を作ります。
最短距離とは、相手からストレートのネット前ですので、配球を読むことができます。
裏をかいても、クロスのネット前でしょうから、自陣後衛がカバーでプッシュを打っても対応できます。
上記の段階の作り方、ポイントの明確化と平易化は、指導者の絶え間ない研究と研鑽の賜物だと考えます。素晴らしいお取り組みと考えております。
《上記❸》
相手を戦術的に追い込むには、配球(コントロール)が肝要になります。
その前提となるのが、ミスなくラリーを継続する能力です。
相手を追い込む配球の途中で、自らミスをしてしまったら、元も子もないからです。
その配球の土台となるラリー継続能力の醸成をミスなしのオールショート(ミスした回数の罰トレ方式)などで構築していきます。
このように上記❶❷❸を駆使することで、戦術を段階的に構築していきます。
その取り組みの継続が、高度な戦術能力を身に着けさせ、多様な局面でも自ら打開していく力を作っていると考えます。
素晴らしいお取り組みと考えます。
今回も最後まで、お読みいただきありがとうございました。
次回は、「戦術の大切さ:初心者から戦術を駆使できる選手を育成する(指導システム構築編)」です。
※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点ご理解の上でお読み、お試しくださればありがたいです。