- Home
- 「癖動作矯正指導法」〜その効果と手法
「癖動作矯正指導法」〜その効果と手法
- 2017/1/16
- バド♪Remaking, 日替バド定食
あけましておめでとうございます。本年も「Bad♪Remaking」を宜しくお願い致します。
さて、今回はこのコラムの本旨である、「癖動作矯正指導法」(以下、「矯正指導法」と表記)の効果と手法について記載させて戴きます。
最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
【1】「矯正指導法」とは?
プレーヤーにとって上達の障害となっている事象を特定、排除し、フォーム等を再構成することによって、上達の効率を向上させる技術指導法です。
その性格上、一般の技術指導法とは異なった知識と指導経験が必要になります。
一般指導が行われた後、プレーヤーのプレーや技術の継続に支障が出ている場合、その原因を特定、対策を提案、矯正作業(再構成作業)を試行し、矯正する流れになります。
それでも効果が見られない場合は、再度、別の原因特定から以下、矯正までの流れを繰り返します。
ある意味、医者と似た部分があります。原因特定、処方箋の発行といった感じでしょうか。
その後の薬を飲むか飲み忘れるかは、患者次第になるのと同じように、矯正指導でも矯正が成功した後に、成果継続のために自宅で鏡を見ながらのシャドウ練習や練習で意識をするかどうかはプレーヤー次第になります。
それにより矯正効果の継続に相違が出てきます。
【2】癖動作はなぜ治りにくいのか?
過去に一旦作られた脳内の運動プログラムは消えにくい性質があるのです。
例えば、自転車に乗れるという能力は長期間乗らなかったとしても、乗れなくなったということは殆どないと思います。要は所謂「身体で覚えた記憶」(手続き記憶)というものは、忘れにくいという特長があるのです。
ところがその性質が仇になって、古い技術(例:腕を耳につけて打つオーバーヘッド打法など)や誤った動作(フライパン持ち(ウェスタングリップ))などが、一旦身についてしまう(手続き記憶の形成)と、それを廃することが難しくなるのです。
運動系の記憶を形成、修正するのは小脳と言われており、全脳内の関連する脳細胞(例:視覚部位、空間認識部位、筋肉に指令を出す部位など)との繋がり(ネットワーク)を形成して、1運動プログラムを構成しています。
その運動プログラムは中々廃れず残りますので、矯正練習で新しく作った脳内運動プログラムと並存するということになります。(道路で旧道と新道(バイパス)の並存状態を比するとイメージしやすいと考えます)
練習時に新しい運動プログラムの方がメリットがあると脳中心部の中枢組織(報酬系中枢:線条体などの部位で自分にメリットがある行為時に活性化する)が判断すると、新しい運動プログラムを脳が選びます。即ち、「癖が治る」という現象になります。
これが、メリットを感じるまでの意識づけや反復練習を行わないと、従前の運動プログラムを脳が選ぶということになります。すなわち、「癖が治らない」「癖がもとに戻った」という現象になります。
矯正効果を継続するには、視覚(脳の意識行動の情報源は、8割が視覚に基づくといわれます)を使った自宅の鏡前スイング練習や、練習時に矯正内容を強く意識して取り組むことが必須です。
【3】「矯正指導法」は短期上達が期待できる
成人プレーヤーは特に、試合練習の練習が多いと思います。試合練習は自分の得意な部分や試合勘、苦手部分の代償技術(例:バックレシーブが苦手なら立ち位置をバック側に寄ってフォアでカバーする)の向上は期待できます。
しかし、苦手技術や癖動作そのものの改善は、中々望めません。試合練習中に苦手技術を試せば、ミスでゲームが途絶えるリスクが高い分、パートナーや相手に気を遣ってしまうからです。
その点、矯正指導で弱点が一気に治れば、今まで弱点が原因でできなかった攻撃や守備、戦術などができるようになるため、今までの養ってきた得意分野の技術とも繋がり、上達の相乗効果が望めます。
よって、短期で上達することが期待できるのです。
【4】「矯正指導法」への取り組み
現状、「矯正指導法」をおこなうにあたっては、様々な流派のバドミントン指導理論、他スポーツの理論や多岐にわたる科学知識などを、蓄積した矯正指導データなどに照合、検証しながら、矯正指導に採用する内容としない内容を取捨選択して仮説を立てます。
その仮説を現場指導で試行することで結果を評価し、結果の良いものは知識(データ)として蓄積(このコラムもその1つです)し、類似ケースに流用します。
結果が良くないものは、再検証し、仮説を再度立て直し、試行というようにプロセスを繰り返します。
そんな感じですので、現場ではほとんど座するということはありません。現場はデータの宝庫であり、新たな発見の場所でもあるのです。
新たな切り口の指導法で、社会のバドミントンスキル向上に貢献できれば幸甚と考えております。
【参考】
(1) 「矯正指導法」知識蓄積資料例
(2) 活動例
①オーバーヘッド矯正プロジェクト
http://minton.blog.jp/archives/254350.html
②バックハンド向上プロジェクト
http://minton.blog.jp/archives/294658.html
今回も最後まで、お読みいただきありがとうございました。
次回は、「コンパクトに弾くスイングをすると肘が痛くなって困る」です。
※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点、ご理解の上で、お読み、お試しくだされば、ありがたいです。