ドロップとカットの違いって何なの?

似て非なるものは、世の中あるものです。双子はもちろん、兄弟でも容姿が似ていると、間違えてしまうこともあります。

しかし、外見は似ていても、基本的に違う人間ですので、性格や趣味、生活パターンは異なっているものと考えます。

ドロップショットとカットショットも、前に落とすということではよく似ていますが、基本的に違うものです。

 

【外見上の相違】
ドロップはゆっくり前に落ち、カットは速く落ちる

ドロップも幾つか打ち方がありますが、打点をクリアーよりやや前にして、インパクト時に肘を後ろ上に捻り上げるようにして打つと、ネットの白帯スレスレに角度をつけて落ちます。すると、中々、プッシュで叩くことが難しくなります。
→2016/3/31コラム「相手の前衛に叩かれにくいドロップを打ちたい!どうすればいいの?」参照)

 

そして、いま1つは、ちょっと打点を後ろ目にして、インパクト時の握りこみを緩めのまま、フォロースイングはあまりとらないようにします。そうすると、シャトルが自分のコート上に頂点(最高点)がある放物線で、ネットの上辺りから垂直に近い角度で急降下します。

ネット近くの床に落ちるので、しっかりと前まで移動しないととれません。
他方、カットは速めの球で打たれることが多く、フォアサイドから打つフォアカットとバックサイドから打つリバースカットがあります。

フォアカットはシャトルのコルクの右側面を擦るようにして打ち、シャトルに回転をかけることによって、羽根による空気摩擦を増やすことで、シャトルを急降下させます。左肩から先は挙げた状態で固定し、右肩から先だけ腕や手、指だけのスイングで打つと、ストレート方向に打つように見せかけやすくなるのと、上半身が左に捻じれない(開かない)ため、コントロールがしやすくなります。

リバースカットはその逆で、コルクの左側面を擦ることで、逆回転をかけます。左肩から先は挙げた状態で固定し、右肩から先だけ腕や手、指だけのスイングで打つと顔や上半身を正面に向けても捻じれ過ぎないため、クロス方向へのコントロールが容易になります。また、ストレート方向に打つように見えるので、相手の出足を遅らせる効果も期待できます。打球は、サッカーの無回転シュートのように、ちょっとふらつきながら、ストーンと落ちます。

シャトルの速度はドロップより速い分、ネットから少し離れた床に着地する特性があります。

 

【使用上の目的】
大切なのは、どんな時に用いるか?どんな効果があるか?を理解して使い分けること

クスリには、必ず「使用上の注意」というものがついています。同じ風邪でも、お腹が痛いのに、咳止めのクスリを飲んでも効果が期待できないのと同じで、目的や場面に応じて、ドロップとカットを使い分けないと、戦略効果が期待できません。

 

(1)ドロップは、基本的に、相手を大きく前後に動かしたい目的で使います。

相手をネット前ギリギリまで大きく動かして、相手のスタミナを削いだり、フェイントを入れながら用いて、足腰の筋肉の疲労を蓄積させます。あるいは、自分が不利な時に、前に逃げる際にも使用します。

但し、シャトルの速度が遅いので、2人いるダブルスで多用するとプッシュされるリスクがあるのと、中々、エースを決めることを期待するのは難しい面があります。

なお一番上の動画のドロップは、球速がやや速く角度もあるため、ダブルスなどでつなぎにも使えます。

 

(2)カットは、基本的に相手の体勢を急激に下方及び前方に崩して、次の球をやや高めのボディ攻撃や後ろに煽る(アタックロブやドリブンクリアー)等でオフェンス効果を上げることを目的とします。

球が速く急降下する分、ディフェンダーは重心を急激に下げなければならないため、バランスを下に崩しやすくなります。(時には、エースショットにもなります)。相手が慌てて、体勢を急速に上方向に立て直すときが、一つの狙い目になります。

上半身が正面向きながら、立て直すことが多いので、そうなると、右肘は右外方向を向くので、胸や顔あたりの高めのコースをスマッシュやドライブで狙えば、レシーブのラケット面は肘の向いている右方向に振られる分、ミスしやすくなります。

スイングミス1 スイングミス2

また、上半身が正面を向くと、後方に下がるのも顎が上がって下がりにくくなる分、ドリブンクリアーやアタックロブなどで後ろに煽る球も効果が期待できます。

さらにスマッシュのフェイントとして使用すると、相手が身体をやや硬めにするため、崩しやすくなります。

但し、スマッシュとほぼ同じフォームで打つことが必要なのと、ネットより少し離れたところ(相手の近く)に着地する分、とにかくスピードとちょっとした空きスペース(例:ストレートスマッシュを意識させて、クロス方向に物理的、心理的空きスペースを作る)が必要になります。

相手がアッと思った瞬間、空きスペースにネットを越えて急降下しているくらいのタイミングでないと、体勢を崩すことができません。

 

放物線ドロップやカットの打ち方は、また、別の回に改めさせて戴きます。

次回は、「初心者はまず何に取り組んでいけばいいの?~初心者講習メニューの公開~」です。

今回も最後まで、お読みいただきありがとうございました。

 

※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点、ご理解の上で、お読み、お試しくだされば、ありがたいです。

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樋口 孝雄バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)

投稿者プロフィール

バドミントン技術研究・指導者(フリーランス)
1966年2月4日生
東京都国分寺市在住
実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ

競技歴:1982~2001年
指導歴:2002年~

私のバドミントン生活は高校から始まりました。運動系全般が苦手な私でしたが、何かスポーツをやりたくてバドミントン部を選びました。
当時、技術指導者はいませんでしたので、仲間よりワンテンポ遅れてしまう自分が、どうしたら理論的に技術が身につくかを、常に考えるようになっていました。この頃の背景がベースになり、今の私の技術指導スタイルが確立されたといえます。

元来、教えることが好きなこともあり、十数年前に小学生の指導を始めました。時間が許す限り、バドミントンのみならず、他競技のDVDや書籍etc.情報を集めては分析・検証し、よりシンプルでわかりやすいスキルアップ方法とは何か、知識と経験を積み上げてきました。現在は、技術指導者のいない中学生を中心に、学齢前から成人までのサポート活動をしております。

同じ指導でも、すぐ体現できる人もいれば、時間のかかる人もいます。指導する側にも、個性を生かした工夫が求められていると、身につくまでの道のりが遠かった私自身の体験から、感じています。

これまでの蓄積と、今後のさらなる追求を少しでも共有でき、特にお悩みを抱えている方々の微力ながら、お役に立つことができれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

競技歴詳細:

東京都立小平西高→法政大学バドミントン同好会72

主催指導活動:

「癖動作矯正指導法」研究及びレッスン
→(http://minton.blog.jp/archives/306166.html)
西国分寺バドレッスン for 中高生 代表者
→ (https://minton.jp/Group/detail/158)
バドミントンNPO団体 東村山フリューゲルス代表者

外部指導活動(東京都内):

実践学園高等学校 女子バドミントン部ヘッドコーチ
平成29年度全国中学生大会神奈川代表コーチ
堀越高等学校 男子バドミントン部
練馬区立中村中学校
東久留米市立中央中学校
他中高計8校、一般3団体

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