前衛でバック側のプッシュを引っ掛けてしまう〜その②

前回までは、原因と指を使ったコンパクトな対応策まで提案させて戴きました (前衛でバック側のプッシュを引っ掛けてしまう〜その①)。

今回はその続きで、ミスを減らす(正確性の向上)についてです。

 

◯このままでは、かなりの確率でミスが出ます。なぜでしょうか?

指を使ったラケット面の回転によって、コンパクトにバックプッシュを打ちますが、実際にやってみると、多くのプレーヤーが、ネットに引っ掛けたり、手首を支点に、ラケット面を後ろに引いてしまい(スイング軌道半径大きくなり)、ネットギリギリのシャトルに、時間的に間に合わなくなってしまうケースが頻発しました。

ヒトの腕から、力を加えて、シャトルを飛ばす際には、力に関する幾つかの法則が利用できます。

その一つとして、「テコの原理」があります。「支点」「力点」(手で力を入れる所:グリップ)「作用点」(シャトルに力を加える所:打点)。力点と作用点は、あまり変えることができませんが、支点は比較的、自在に変えることができます。

この法則を特に意識しないで、前回に書かさせて戴いた指の動作で、ラケット面を回転させると、シャフトが回転軸(支点)になり、ラケット面に関しても、シャフトの延長上の線(面の一番上から、シャフトとフレームの接合部を結ぶライン)が回転軸(支点)になりやすくなります。

回転軸1

そこが、回転軸(支点)になると、1点問題が発生します。

それは、ラケット面において、自分から見て、回転軸の左半分側にあるラケット面に、シャトルが当たったとき、その面は、手前に移動(回転)してしまう分、シャトルが前方に飛びにくくなるのです。そこで、ミスが発生する確率が上がってしまうと考えます。

  前衛でバック側のプッシュを引っ掛けてしまう~その②

 

◯それでは、どうしたらよいのでしょうか?

上記のようなミスを減らすため、回転軸(支点)をどこに置くかという意識が必要になります。言い換えれば、ラケット面全体が同一方向に移動するような場所に、回転軸(支点)を設定するということです。

それはどこかというと、自分から向かって、左側(外側:バックハンドで)のフレーム上になります。但し、左側フレームの真ん中から上部については、握っている手の構造上、上手く動きません。

回転軸3

そこで、左側(外側)フレーム下部のちょうど真ん中に、回転軸(支点)を置けば(上図)、ラケット面の全ての部分が、前方に移動しますので、ミス発生のリスクも激減します。

上述したシャフトの延長上の回転軸で、手前に面が移動してしまい、ミスを誘発した左側(外側)半分の面も、前方に移動しますので、その分、ミスのリスク減少に大きく貢献していると考えます。

このような形で、より正確性を担保します。

 

〇では、ネットタッチ(フォルト)は、どう避ければいいのでしょうか?

ネット前プッシュは、常にネットに触ってしまうフォルト (ネットタッチ)のリスクが付きまといます。どうすれば、よいのでしょうか?

そこで、ネットタッチしない方法として、払い戻し動作を利用します。

払い戻し1 IMG_5360 IMG_5362 IMG_5363 払い戻し5

 

指を使う動作時に、指を動かす筋肉は前腕に集中しています。

前腕図

指を握りこんだ際に、それら前腕の一部筋肉が、瞬間的に引き伸ばされます。
筋肉繊維内には「筋紡錘」というセンサーが付いていて、筋肉が伸びた! と感じると、神経を通して(感覚神経)、遠い脳ではなく、近い背骨内の脊髄に情報を伝えます(時間の節約)。
瞬時の引き伸ばしで、筋肉が切れてしまうのを防止するため、脊髄から、筋肉収縮の指令が出ます。脳を通さないので、無意識で瞬間的に筋肉が収縮します(伸張反射)。

伸張反射

この反射動作を主に、払い戻し動作に利用します。

もう1つは、2つの物体(ここでは、ラケット面とシャトル)がぶつかるとき、力学的には、打点(衝突点)から前後(逆方向)に同じ量のパワーが働くという法則(作用反作用の法則 (ニュートンの第3運動法則))を利用します。

作用反作用法則              ニュートン

前に働くパワーは、重さの軽いシャトルを前方に吹き飛ばします。もう1つの後ろに働くパワー(反力)も利用して、ラケット面を後ろに払い戻します。

反力

さて、この二つの力を、効果的に発揮するために、ある動作をします。

それは、ラケット面をシャトルのコルクの方に近づけたあと、インパクトまでの時間に、瞬時に指の操作をおこない、ラケットの上のフレームが、前腕(手首~肘)の位置を追い越して、インパクトするようにします。

打点から、スイング(回転)の支点となる、関節までの距離(回転半径)が短くなれば短くなるほど、スイング(回転)速度が上がります(例:打点~指(支点)の半径のスイングのほうが、打点~肘(支点)の半径のスイングよりも、速い)。(→角運動量保存の法則)

先端のパーツ(手~ラケット)が、加速されると、手前のパーツ(前腕~上腕)のスイング速度は、極端に遅くなります。そして、先端のパーツ(手~ラケット)が、手前のパーツ(前腕~上腕)を追い越すと、手前のパーツ(前腕~上腕)のスイングは止まります(二重振り子の原理)。

(例) 脚での例 ↓

キック反作用吉福康郎 「武術の科学」より

腕(前腕と上腕)が止まったところで、上記の脊髄の反射や、反作用の戻る方向の力が加わって、手前にラケットを振り戻すことができます。結果、ネットにタッチすることなく、鋭いプッシュが打てます。

インパクトのときに、小指や薬指を握り込めば、シャフトやフレームより柔らかいガットに、シャトルのコルクがメリ込み、ガットの回復力により、前後に更なるパワーを追加できます。
シャトルは更に鋭く前方に飛び出し、ラケット面も、より鋭く後ろに戻ります。

インパクトと同時に、グリップエンドをやや後ろに引きながら、上に(手首と同じ高さ位まで)引き上げれば、プッシュの角度がより鋭角になり、ネット近くの床に叩きつけることができます。

バックプッシュ

 

(動画)※このコラム要約動画です。

 

◯付記: なぜバドミントンは、このように細かい手先の技術を要するのでしょうか?

テニスや野球など他競技に比べて、バドミントンのシャトルは、軽量です。スピードは出ますが、16枚の羽根が付いているため、手元までに減速もします。

レシーバーが受けるパワー(力積:りきせき)は、シャトルと攻撃者の重さが重ければ、重いほど、また、シャトルのスピードが速ければ速いほど、大きくなります。(パワー(力積)=重量(質量)×スピード(加速度))

しかし、シャトルは、野球の硬球や、テニスボールなどに比べて、重さが非常に軽いため、スピードは速くても、レシーバーの腕や肘が受けるパワー(力積)は低くなります。パワーが小さい分、負担も少ないため、指や手首での操作が可能になります。(逆に、テニスや野球などは、手首ましてや、指などでは打つことができません。すぐに痛めてしまうと考えます。)

 

次回は、「パワーは、どうやってシャトルまで伝えればいいの?」です。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※指導で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。他の指導法を否定する意図はございません。その点、ご理解の上で、お読み、お試しくだされば、ありがたいです。

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樋口 孝雄

樋口 孝雄バドミントン技術指導者(フリーランス)

投稿者プロフィール

バドミントン技術指導者(フリーランス)
1966年2月4日生
東京都国分寺市在住
競技歴:1982~2001年
指導歴:2002年~

私のバドミントン生活は高校から始まりました。運動系全般が苦手な私でしたが、何かスポーツをやりたくてバドミントン部を選びました。
当時、技術指導者はいませんでしたので、仲間よりワンテンポ遅れてしまう自分が、どうしたら理論的に技術が身につくかを、常に考えるようになっていました。この頃の背景がベースになり、今の私の技術指導スタイルが確立されたといえます。

元来、教えることが好きなこともあり、十数年前に小学生の指導を始めました。時間が許す限り、バドミントンのみならず、他競技のDVDや書籍etc.情報を集めては分析・検証し、よりシンプルでわかりやすいスキルアップ方法とは何か、知識と経験を積み上げてきました。現在は、技術指導者のいない中学生を中心に、学齢前から成人までのサポート活動をしております。

同じ指導でも、すぐ体現できる人もいれば、時間のかかる人もいます。指導する側にも、個性を生かした工夫が求められていると、身につくまでの道のりが遠かった私自身の体験から、感じています。

これまでの蓄積と、今後のさらなる追求を少しでも共有でき、特にお悩みを抱えている方々の微力ながら、お役に立つことができれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

競技歴詳細:

東京都立小平西高→法政大学バドミントン同好会72

主催指導活動:

「癖動作矯正指導法」研究及びレッスン
中高生のためのバドミントン技術レッスンプロジェクト(西国分寺)代表者
バドミントンNPO団体 東村山フリューゲルス代表者

外部指導活動(東京都内):

堀越高等学校
練馬区立中村中学校
東久留米市立中央中学校
他中高計8校、一般2団体

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